【特集】アニメ『わたなれ』の魅力を大解剖!制作陣に訊く、百合の枠を超えた”ガールズラブコメ”の舞台裏


【特集】アニメ『わたなれ』の魅力を大解剖!制作陣に訊く、百合の枠を超えた”ガールズラブコメ”の舞台裏

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一貫して追求したテーマとは

――映像を作る上で、一貫してこだわったテーマはありましたか?

内沼監督:「キャラクターを立たせる」ことを大切にしました。シチュエーションによっては綺麗な場所に行っていたりするんですけど、綺麗な背景を見せることに重きを置くよりかは、そのシチュエーションにいるキャラクターの表情や感情を一番に考えていました。

石田P:とにかく「顔を可愛く」描くことですね。キャラクターの魅力がこの作品の根幹だというのは、企画当初から一貫していましたね。

――れな子のコミカルな表情や心の声、王塚真唯の完璧な姿と時折見せる素の表情など様々な魅力がありますが、キャラクターの機微を描く上で特に注力した演出を教えてください。

内沼監督: ちゃんとコメディをやるということを意識していました。全体的にシリアスで暗い話にはしない方向で、ポップにラブコメであるというところを大切にしていて。

特にれな子は、真面目な話をしている時も、これはれな子の逃げ癖からくるものだと思っているのですが急にすごくふざける様なことを口にするので、それを差し込みつつ重たくなりすぎないように緩急のメリハリを大切にしながら、より受け取りやすくなるよう全体的にラブコメの雰囲気で仕上げています。

一方、真唯は、12話までの描写では特に、常に真唯であることが彼女の役割だと思っているんです。なので、ギャグシーンもところどころにはあるんですけど、そんなにブレない感じというのをベースに作っています。

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そして、紫陽花さんは1話から12話までれな子と関わってきた事によって一番変わったキャラクターだと思うんですね。紫陽花というキャラクターとしては、12話でれな子に告白できるようになったというところが一つ、紫陽花としてのゴールでもあるのかなと思っています。

あと、紗月さんは面白いキャラクターですよね。見ていてすごく楽しいキャラクターだったので。ただ、すごく文章映えするキャラクターというか、セリフ内容の鋭さや面白さが特に魅力的だと感じていたので、映像に落とし込むのは少し苦労しました。

れな子や香穂ちゃんは動きや崩しで面白く見せたり、真唯は行動自体が突飛で、紫陽花さんの等身大な優しさは他キャラとの絡みの中で見せられたりする中で、紗月さんの言葉の魅力は“言葉でしか表現できない種類”だと思ったので紗月編の1本目(第5話)はなるべくシンプルに言葉を聞かせるイメージで考えていました。

――アニメでこのシーンを描けるのが楽しみで仕方がなかった、というシーンがあればお聞かせください。

石田P: 作品全体で言いますと、第8話のゲーム対決のシーンはCGの描写などを含め、みんなどうやって受け取るのかなって気になっていました。

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内沼監督: あのシーンはこちらとしてもどう反応いただけるのか…と気にかけていましたね。

全体の中で言うと、私はやはり第1話でしょうか。真唯とれな子の会話がすごくハイテンポで、カットもとても早く切り替り、セリフもすごく画面に出ていて、かなりごちゃごちゃした感じにしていたので、原作ファンの方にどう受け入れられるかなって不安もありました。

ライトノベル原作という文字ベースで感じられるスピード感を、お芝居だったり描写だったりでリアルタイム感を意識して仕上げたところだったので、期待半分不安半分みたいな感じでした。

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石田P: 今振り返るとドキドキでしたね。

――制作過程において多々苦労あったかと存じますが、特に「これは想定外に上手くいった」といったエピソードがあれば教えてください。

内沼監督:先ほどのテーマの話に関連するのですが、今回、総作画監督(総作監)が通常のアニメじゃ考えられないくらいの人数いらっしゃるんですよ。

スケジュールの都合もあると思うので全部がそうでは無いと思うのですが、おそらく制作さんがどこのシーンに誰を、と考えて下さったのか、それぞれの総作監さんの良さが各シーンで現れていて、個人的にはよかったと思うポイントでした。

石田P:この作品のクオリティを保つためには、とにかく顔の作画を守ることが最も重要でした。そのためには多くの総作画監督にご依頼するという戦略的な判断ですね。総作監さんが通常より多い分、各話間での絵柄のバラつきが不安要素でしたが、みなさんの個性が活かされて、結果としてはとても良かったなと思っています。

内沼監督:クレジットを見て「この人がここの作画、作監をやっているのか」と探してみるのも面白いかもしれませんね。

「わざとらしくなく、リアルに」撮影処理のこだわり

――本作は時折見せる美麗な表現も魅力的だと思いました。映像表現、特に撮影処理についてこだわったポイントはありましたか?

内沼監督:撮影処理は本当に綺麗に仕上げていただきました。日常シーンには光の処理などを過度に入れていないのですが、だからこそ、ここぞという場面で入る光の表現が、より効果的に活きてましたね。

石田P:撮影処理を入れすぎると、かえってキャラクターの絵を邪魔してしまうことがあります。その点『わたなれ』ではすごく良い塩梅で、キャラクターの魅力を最大限に引き出す処理を入れてくれたと感じています。

――では特に印象的だったシーンはありますか?

内沼監督:私は、紗月さんとの第6話Bパートですね。キスシーンで紗月さんのところに差し込む月明かりの処理って、実はPV用として普段より盛って作っていただいたものなんですよ。それがとても美しくて、「ぜひ本編もこれでお願いします!」と依頼しました。

――度々登場するお風呂シーンは、配信サイトやXなどでの反響も大きかったです。

内沼監督:撮影監督の師岡拓磨さんとも伺いつつ進めていたのですが、個人的にお風呂シーンは「湯気でわざとらしく隠したくない」という思いがありました。もちろん放送コードの範囲内で、という制約はありますが、雰囲気を壊さずに「見せるべきところはごく自然に見せる」という調整をピンポイントでしていただきました。

石田P:あんなにリアルなお風呂のシーンに、視聴者の皆さんが喜んでくれるとは思っていなかったですね。なので、良い意味で意外な反応でした(笑)。

――ちなみに、作品のテーマやリアリティを追求するにあたって、ロケハンはかなり行われたのでしょうか。

石田P: 原作が都内の設定なので、行けるところは行こうという感じでした。ただロケハンでスタッフが集まっていったのは学校くらいで、あとは監督があちこちに自分で行くという形でしたね。

内沼監督: たとえば第6話で、紗月さんが田んぼ風景の中で迎えに来るというシーンがあったと思うんですけど、あれは原作から背景が田んぼだったので、京王線沿いが舞台である事は描写されていたのですが「本当に都内にこんなところがあるのか?」と思っていたんです。

でも京王線沿いの駅の周りを歩いていたら、ちゃんとその辺に田んぼがあったんですよ。あとは終盤で描かれた熱海方面の海岸とかは一人で行ってきました。赤坂とか、名前がもうここだろうなっていうのが出ているところも、実際の場所を参考にしているので注目してみてほしいです。

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Yoshioka

著者 Yoshioka
媒体統括兼㈱オタクリエイト代表取締役。領域はアニメ、テクノロジー、コンテンツビジネス、Webシステム開発など。PRやIP調達も担当。好物は新作アニメ(きらら、百合なら特に)、海外スマホ、放浪旅など。

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