VTuberへの誹謗中傷事案で「加害者の聴取内容を公開」異例の対応 “なぜ行為に及ぶか”解明の一助に


VTuberへの誹謗中傷事案で「加害者の聴取内容を公開」異例の対応 “なぜ行為に及ぶか”解明の一助に

VTuberグループ「にしさんじ」を運営するANYCOLORは22日、所属ライバー「甲斐田晴」に対する悪質な誹謗中傷行為などを行っていた人物との和解成立を発表。和解条件として対象者への意識調査を実施し、その結果を公表する異例の対応を行った。誹謗中傷行為の根絶に向けた意見形成の一助としたいとしている。

本事案では2024年6月と12月に、甲斐田晴を中心とした所属ライバーに対する荒らし行為、タグ荒らし行為、危害予告などを行っていた人物への民事的・刑事的責任の追及を進めていることを明らかにしていた。結果、刑事責任については、業務妨害罪の容疑で書類送検された対象者が管轄裁判所において罰金刑を言い渡されていた。

「極めて歪んだ感情が混在」当時の意識明かす

今回公表された意識調査によると、対象者は「20代後半の女性」で、甲斐田晴や他のライバーのYouTube配信での執拗なコメント連投、甲斐田晴のイラストを無断利用したなりすまし行為、配信用ハッシュタグを悪用したグロテスク画像・動画の拡散、さらには同氏が所属するユニット「VΔLZ」のリアルイベント会場に危害を加えるような内容の書き込みを行っていたことが明らかになった。

行為の動機について、対象者は「配信者様とリスナー様の距離が比較的近い界隈のため、自分の好きなライバー様との距離感を一方的に縮めようとしてしまいました」と回答。背景には「強い承認欲求と日頃のストレスがあり、精神的に不安定な状態でした」と説明している。職場での人間関係のストレスを適切に解消できず、健全な発散方法を見つけられなかったことが要因だったという。

荒らし行為中の感情については、「面白がっているという感情や、ライバー様が自分に反応しているという異常な承認欲求を満たしているという、極めて歪んだ感情が混在していました」と振り返った。

また責任追及を受けた後の状況について、「家族に迷惑をかけてしまうという強い焦りと後悔の念に駆られました」と回答。特に警察に被害届を提出されたことを知った後は「いつ警察が家に来るのだろうか」「身柄を拘束されるのではないか」といった強い不安感に襲われ、法律関連のサイトを閲覧する日々が続いたという。

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https://www.anycolor.co.jp/news/8hb6b4nrh-w7

対象者は現在の心境について「過去約2年間、自分の行為によって甲斐田晴様、他のライバーの方々、そしてにじさんじリスナーの皆様がどれほどの精神的苦痛を負われたかを考えると、後悔の念に堪えません」と述べ、当時の自分に対しては「今から書こうとしている内容で、誰かを深く傷つけないか?」と問い直し、「無責任な情報発信がどれほどの後悔を生むか、その一歩を踏み出す前に、どうか踏みとどまってほしい」と伝えたいとしている。

今回の対応の狙いは

同社は今回の意識調査を実施、公表するに踏み切った背景として、悪質な誹謗中傷行為や荒らし行為が後を絶たない現状があると説明。これを踏まえ、誹謗中傷行為がなぜ発生するのか、その根本的な原因や背景を多角的に理解することが効果的な対策を講じる上で不可欠であると説明している。

対象者の内面にある動機や心理状態、過去の経験などを多くの人々に認識してもらうことで、大きな社会問題である誹謗中傷行為の根絶に向けた意見形成の一助となることを期待しているとコメントしている。

著者 経済/社会担当
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発表文