【特集】一見普通のメガネ、覗くとテキストが浮かび上がる。次世代スマートグラス「Even G1」メーカーCEOが日本市場に熱視線

Apple出身のCEOが率いるEven Realities社が展開するスマートグラス「Even G1」が“日本未発売”であるにも関わらず、しばしば国内ユーザーからの支持を集めている。同社はこの熱烈な支持を受け、急遽、日本を最重要市場と位置づける戦略に舵を切った。日常に溶け込むデザインと実用性を武器に、本格的な日本展開を計画している。
今回、Even Realities社のCEOであるWill Wang氏が「東京ゲームショウ2025」開催に合わせて来日しており、同氏への単独インタビューを実施した。

まるでSFの世界…“日常使い”のスマートグラス
Even G1は、一見すると洗練されたデザインのメガネだが、レンズの向こうには緑色の単色のテキスト情報が浮かび上がるスマートグラス。SF味さえ感じる近未来さが魅力の一つとなっている。
視野を妨げない自然な見え方で、リアルタイムの翻訳、ナビゲーション、スピーチ原稿といった情報を表示する事ができる。特にナビゲーション機能を使えば、サイクリングやランニング中でも視線を落とすことなく、安全にルートを確認できるため、普段メガネをかけない人にとっても有用なプロダクトとなっている。
特にテレプロンプター機能は、多くの経営者や政治家から支持を得ているという。人前でスピーチをする際に、手元の原稿を見ることなく、視界に浮かぶスクリプトを読むことができることができるため、イメージ向上にも役立つ。Wang氏によると、アラブ首長国連邦の大臣クラスが実際に「Even G1」を使用している様子が新聞に掲載されたほか、日本でも既に与党議員がインタビュー中に「Even G1」を着用していたという。

なお、XREAL社をはじめとする既存のスマートグラスと異なる点として「エンタメ用途ではなく、あくまで日常生活を補助するためのモノ」という製品コンセプトそのものの相違が挙げられる。
この設計思想の背景には、異色の経歴を持つ開発チームの存在がある。CEOのWill Wang氏は、AppleでApple Watchの開発に携わった経歴を持つ。CTO(最高技術責任者)も同様に、iPhoneのカメラ開発に長年従事してきた光学技術の専門家だという。
さらに、共同創業者には、SamsungやPhilipsでデザイナーとして活躍した人物や、高級アイウェアブランドでデザインを手がけてきた”テクノロジー領域以外”の専門家も名を連ねる。
テクノロジーとアイウェアデザイン、両方のプロフェッショナルが集うことで、Evenの機能性やデザイン性が生み出された。ちなみに、同社は最先端技術が集まる中国・深センに本社を構えるほか、ドイツ・ベルリンにも拠点を持つといい、この2拠点体制もテクノロジー×デザインを成し得るに重要な要素になっている。
“敢えて”機能を削ぐ、背景にあるコンセプトとは
Wang氏は、「私たちが目指しているのは、単なるハイテク機器ではありません。人々が毎日かけたいと思う、美しいメガネです」と製品のコンセプトを語る。自身も一日中メガネをかけるユーザーとして、メガネが「顔の一部であり、自己表現の一部」であることの重要性を強調する。
そのため、Even G1の開発では、最先端の技術をいかにスタイリッシュでスリムなフレームに収めるかという点に最大限の努力が払われた。
そのこだわりは、機能の取捨選択にも表れている。例えば、Even G1はカメラやスピーカーを搭載していない。その理由についてWang氏は、「プライバシーの問題を非常に重視しています。メガネにカメラがあれば、盗撮を疑われたり、意図せず他者を不快にさせたりしてしまう可能性がある」と説明する。

また、不要な機能を追加して重くなることを避けたかったという。あくまで「日々の生活をサポートする」という目的にフォーカスしているそうだ。この設計思想は、エンターテイメント用途を中心に置く「XREAL」をはじめとする他のスマートグラスとは一線を画す。

著名人からも支持されるEven、日本は「最重要市場の一つ」
Even G1は当初、アメリカとヨーロッパ市場を中心に販売を開始したが、日本市場は直接的な販売を行っていないにもかかわらず、販売地域別で上位に匹敵するほどの売れ行きを示しているという。
これにはWang氏も「想定外」と話しており、同氏は「日本のユーザーの方々が製品を深く愛してくださり、SNSや口コミでその魅力を広めてくれたのです」と、日本のユーザーの注目度の高さに驚いていた。
現在、日本では公式ウェブサイトでのみ購入可能だが、Wang氏は日本を最重要市場と位置づけ、本格的な展開を計画していると明言する。その一環として、今後1年以内の正式展開を見据え、日本の販売代理店との協議も進めていることも明らかにした。(編注:製品は技適取得済)
最後に、日本のユーザーへのメッセージを求めると、Wang氏は「すでに使って頂いている日本ユーザーの皆様には非常に感謝申し上げます。優れた品質、デザイン、そしてテクノロジーを評価してくださる日本の文化は、私たちの製品哲学と完璧に合致していると確信しています。今後、日本の皆様により良いサービスを提供できることを楽しみにしています」とコメントした。