夏アニメで”あえて全6話”ハーフサイズの事例に注目「無理に引き伸ばさない」展開に支持

2025年9月までに展開された夏アニメでは、例年通りほとんどの作品が12話から13話で構成されていたが、あえて全6話というハーフサイズで制作された作品も複数存在していた。単なる予算削減だけでなく、作品の質を高めるための選択として注目されている。
2025年夏に全6話構成で展開されたのは、少年ジャンププラスで連載されていた『タコピーの原罪』と、SNSで話題となったガールズコメディ漫画『フードコートで、また明日。』の2作品。
『タコピーの原罪』は、ハッピー星人のタコピーが笑わない少女・しずかたちと織りなす衝撃作で、6月28日から毎週土曜日に配信された。本作は「原作の意図を尊重」し、命に関わるセンシティブな描写が含まれていたことから、テレビ放送の無い配信限定となっていた。Netflix、ABEMAをはじめとするプラットフォームで同時配信されると、新規ファンを取り囲みながら話題になった。
一方、『フードコートで、また明日。』は、7月7日からTOKYO MXほかで放送された作品で、宮城県名取市の「イオンモール名取」を舞台に、外見から誤解されがちな2人の女子高生、和田と山本が、ショッピングモールのフードコートでただただ他愛もない話をするという、極めてシンプルな日常系作品だ。
放送以降、説明通り「本当にフードコートで話をするだけ」という展開が注目を集めたほか、第6話放送後には「アンコール放送」も実施。エンディングテーマの掛け合いセリフが変化するなど、細やかな違いも設けられた。

原作を無理に引き伸ばさない展開に
上記作品はいずれもWEBコミック原作、単行本全2巻という短期連載であることが共通点として挙げられる。原作の分量によっては、無理に12話に引き延ばすよりかは6話で完結させる方が本来の魅力を損なわずに映像化できることもあるため、今回の展開は理にかなう判断ともいえる。
特に前者の『タコピーの原罪』は配信オンリーという挑戦的な展開だったこと、そして原作を尊重するというポリシーから、展開を引き延ばすのは悪手と受け取られる可能性がある。結果、強烈な余韻を残すこともあり「ちょうど良かった」と好意的な意見が多かったほか、IMDbによる海外レビュースコアは「全話9.0以上」という、アニメ作品史上初の記録を叩き出した。
後者の『フードコートで、また明日』についても、「ただ話をするだけ」という作品の特色を鑑みると、フルサイズでの展開は初見の視聴者にとっては「中だるみ」を感じてしまう可能性があり、妥当とする評価も見受けられた。一方で「15分アニメで毎週やってほしかった」という感想も投稿されるなど、同じ分量でも多様な展開の可能性も示唆されている。
また、近年のアニメ制作費の高騰や人材不足が指摘されるなかで各話へのリソース集中という観点においても、製作者側にとっても合理的な判断とも言えそうだ。
なお、上記作品以外にも、さらに短い「全5話」展開の作品として、同人誌発となる和山やま氏原作『カラオケ行こ!』『夢中さ、きみに。』も話題になっていた。(作品の内容はともかく)どれも「比較的完走しやすい」ハードルの低さもあるため、チェックしてみると良いかもしれない。