プラモ35%増産へ―バンダイの“新工場”に潜入&考察 静岡に「ガンプラシティ」は生まれるか?


プラモ35%増産へ―バンダイの“新工場”に潜入&考察 静岡に「ガンプラシティ」は生まれるか?

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8月20日、株式会社BANDAI SPIRITSが静岡県静岡市に建設したプラモデル製造の新工場と併設ミュージアムの内覧会が行われた。

この大型施設は「ガンプラ」を始めとしたバンダイブランドのプラモデル製品の生産能力を大幅向上させるのみならず、来訪者を積極的に受け付けて「プラモデルの面白さ」を伝える目的も与えられている。購入直後はいくつもの部品に分かれているプラモデルをひとつずつ組み立てることで、我々はどのような体験を得られるのか。

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現代の子供たちは常に最先端の娯楽に囲まれているため、そもそもプラモデルというものに触れる機会が極めて少ない。「プラモデルのまち」を標榜する静岡市の住民ですら、自らの手でプラモデルを作る人は決して多くないのだ。

娯楽過多の現代において、バンダイの新工場はどのような意義を見出すのだろうか。

最先端のガンプラ工場

静岡市の新工場の名称は『BANDAI HOBBY CENTER PLAMO DESIGN INDUSTRIAL INSTITUTE』、略して『PDII(ピーディーツー)』。

2026年度までに多色成形機10台、単色成形機84台を設置する予定としているこの新工場は、溶解させたプラスチック原料を部品に成形する過程から最終的なセット作業まで、全て工場内で完結するように設計されている。部品の移動は天井に設置されたレールを進む搬送台車が行う。これにより、省力化と合理化が実現する。

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これにより、バンダイの2026年度のプラモデル生産量は、2023年度比の約35%増になる見込みという。

驚くべきは、その清潔さと見通しの良さだ。「工場は汚くて危険」というイメージを今でも持っている人は少なくないはずだが、PDIIに関してはそのイメージとは無縁。その場で弁当を広げて食事を始めたとしても、不快には感じないであろうほどの衛生レベルである。

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さらに、後述するミュージアムとPDIIを仕切るのはガラスのみ。つまり、ミュージアムの見学者から工場の様子を見渡すことができるのだ。

多色成形技術がもたらす「塗装不要」のプラモデル

バンダイのプラモデルといえば、何と言っても「多色成形の技術」である。

1枚のランナーの中に、最大4色の異なるカラーを接続することができる。効率的な部品配置のランナーを生産すると同時に、完成した製品は自ずと「塗装不要」になる。もちろん、それを組み立てた者が独自の塗装を施すこともできるが、それをしなくともパッケージに描かれている通りのカラフルなガンダムやジムが出来上がる。

プラモデルは、決して難しい娯楽ではない。そうしたことを解説する役目は、PDIIに併設のミュージアムに与えられている。

このミュージアムでは、プラモデルの企画づくりから実際に製品を設計し、パッケージを作成するまでの流れを体験できる。たとえば、同じRX-78-2ガンダムでも昔と今とでは細かい設計やデザイン、そしてモビルスーツに対する解釈そのものが大きく異なっている。また、主人公のアムロ・レイが乗っていた機体の他にもガンダムは存在していたはずで、こちらはアムロ搭乗機とここがこう違うのではないか――という空想を巡らせることもできるだろう。

そうした「自分だけのガンダム」を作成し、パッケージデザインにするまでの体験プログラムが用意されているのだ。

また、ここではガンダムだけでなく、ティラノサウルスや『30ミニッツシスターズ』のリシェッタの「改設計」も可能だ。

静岡市民は「プラモデルに熱心な人たち」ではない?

ここからは施設の立地についても紹介すると、バンダイの静岡工場の最寄り駅は「静岡鉄道長沼駅」となっている。

そして9月2日、上述のミュージアムのオープンに合わせて長沼駅に「長沼バンダイホビーセンター前駅」という新たな副駅名がつくこととなる。

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著者 澤田真一
静岡県在住。経済メディア、IT系メディア、ゲームメディア等で記事を執筆。東南アジア諸国のビジネス、文化に関する情報を頻繁に配信。