にじさんじ、“人気ライバーの収益依存”リスクの認識は 年間約20名の積極的なデビュー方針がカギに


にじさんじ、“人気ライバーの収益依存”リスクの認識は 年間約20名の積極的なデビュー方針がカギに

VTuberグループ「にじさんじ」を運営するANYCOLORは先日、2025年4月期の通期決算を発表したなかで、今後のデビュー方針として、向こう1年間で約20人の新人ライバー(VTuber)をデビューさせる方針を明らかにした。

11日に公表された決算資料によると、同社は2025年4月期中(’24年5月〜’25年4月)のうちに計19人のライバーをデビューさせていると説明したうえで、当期も同規模での新人発掘を継続すると明かした。これにより、グループ全体で合計170人のライバーが所属している。

同時に各種収益指標も公表されており、年間売上を所属ライバー数で除した「VTuberあたり年間収益」は前期から5000万円以上増やす2億5200万円となった。成長の背景にはコマース領域やプロモーション領域が当初の想定を上回る伸びだったことが挙げられ、今後も10%〜15%幅での増加を見込んでいる。

依存リスクの可能性は「高くない認識」

一方、VTuber事業全体のリスクとして「人気VTuberへの依存」が指摘されており、同社も「人気VTuberのライバーが活動を休止 (卒業・引退など) した際に当社業績への影響が出る可能性が存在」すると言及していた。

しかし、リスク対策の項において「当社事業の特徴として逃れられない点ではあるものの、実際は当社の売上は多くのVTuberに分散しており、特定VTuberへの依存によるリスクが顕在化する可能性は高くない認識」との見解を示した。

実際、VTuber一人あたりの収益貢献度分布では上位25名がそれぞれ2%で累計約50%、50位までの25名で0.6%、100位までの50名で0.2%となっており、一部に集中している現状はある。しかし、同社は「近年にデビューしたVTuberの平均売上は高い傾向にあり、デビューから収益貢献までの時間軸は早期化傾向」であると自己分析している。

デビュー年度別の貢献度では、2019年4月期以前デビューの人が24パーセントの貢献だったのに対し、2023年4月期デビューの29人は23パーセント、2024年4月期デビューの10人は5パーセント、2025年4月期デビューの19人は2パーセントとなった。

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この傾向の要因について「VTAを通じたデビュー戦略やユニット展開」などを挙げ、今後の新人デビュー方針についても「特色あるVTuberデビューを継続し、VTuberのジャンル・属性の面で多様性を促進し、新しいファン層を開拓」するとし、リスク対策の一助にもなる可能性を示唆した。

研修制度「VTA」には4万人が応募…実際にタレントも輩出

このVTAとは、ライバーとして必要なスキル向上と、才能を活かす活動機会の提供を⾏う研修機関「バーチャルタレントアカデミー」を指し、専門の事業部が運営する。「にじさんじ」タレントとしてのデビューも念頭に置いた候補⽣のオーディションを行っており、過去3回で計4.1万人の応募があったとも明らかになった。

こうした動きからも、今後も継続的なデビューを行いつつ、新人発掘を目指した研修制度の取り入れなどを中長期で取り組むことで、リスクに対応できる仕組みづくりにも注力していくとみられる。

なお、国内大手として業績でも並ぶ存在である「ホロライブプロダクション」のカバーは5月に行った説明会見にて、谷郷CEOがデビュー方針について言及。「我々としては、いたずらにタレント数を増やすよりかは、実力のあるタレントさんの活躍の場を広げることに足元では注力したいと思っています。その上で、今後どうしていくかも同時に中長期的に必要になってくるとの考えです」との考えを表明していた。

著者 編集部 経済・社会担当
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