ガンプラを「買うための努力」いつまですればよいか 欲しい人に届く明るい兆しは


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ガンプラ――言うまでもなく、ガンダムシリーズのプラスチックモデルである。第一陣として1/144ガンダムが1980年7月に発売されて以来、組みやすく、可動面でも優秀なキットの数々は世のオタクたちを長年魅了してきた。

しかしそんなガンプラ、現時点ではなかなか新商品・再販問わず購入することが難しくなってきた。さまざまな理由があるが、大きなものに転売屋の標的になったという点が指摘されている。

商材としてガンプラを見なす人たちが全国的に、何の愛着もないであろうガンプラを買い漁ってはネット転売するようになって久しい。今、ガンプラを購入するためには結構な努力を強いられる羽目になってしまっている。

ガンプラ買うためにはエンヤコラ…涙ぐましい努力の数々

ガンプラが転売対象となって知れ渡ったのは2020年ごろのこと。コロナ禍の巣ごもり需要でプラモデルを自宅で組みたいと考える人が増えた折、作品の知名度も加わり転売屋たちがその需要に着目し、買い占めるようになってしまった。

そしてまた、今の時代はネットを使えばすぐに望みのものが自宅に居ながらにして手に入るという環境が追い風となり、転売価格でキットを購入する人も発生。これが「ガンプラは儲かる」という価値観を転売屋各位に植え付けることとなってしまったようだ。

しかし、みんながみんな割高の価格でキットを購入したがるわけではない。これまで欲しいキットを好きなタイミングで模型屋や量販店で購入するスタイルが当たり前だと考えていた模型ファンたちの中には、転売を敬遠する者達も多い。

そういう人々にとってここ数年は、転売屋と競うようにして新発売のキットの争奪戦に参加することを強いられるような状況だと言っても良いだろう。

その努力たるや、並大抵のものではない。発売日当日には開店前にお店に並んで、目当ての商品を迅速にゲットしたり。「プレミアムバンダイ」に代表されるネット限定のキットの購入にあたっては、予約解禁となる時間に急いでアクセスし、カートに入れて購入処理を済ませたり。このような苦労をして、やっと目的のキットを手にしているのだ。

また、不定期に再販されるキット目当てのファンも同様に、転売目的の人々と競うようにお店で争奪戦に及んでいる。少し前に『機動戦士Zガンダム』系のHGキットが多数再販されたが、この時もそういった光景があちこちで展開されていた。

組む苦労や塗る苦労以前に、買う苦労がかなり大きな割合を占めているのが今のガンプラの現状となっている。なお、ガンダムインフォ(公式ポータル)の一部ページには「不正行為や、転売が疑われると店舗スタッフが判断した場合には販売自体を中止・お断りする場合があります」と明記しており、予約にも制限が設けられている場合が多い。

新工場稼働開始!25年度中には需要に供給が追い付くか?

もちろん、販売元のバンダイも現状は認識しており、かなりの対処を講じている。金型がある限り再生産は可能なので、前述のようにキットの再販も行っている。

昨年は劇場作品『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』が公開されたが、その主役級MS(注:モビルスーツ)キットは、ファミリーマートなどコンビニでも陳列されるなど、需要に対してなるべく柔軟に対応する姿勢を見せている。それでもほぼ瞬殺だったのが恐ろしい。

筆者も狙ったが一手遅かった。結局昨年手に入れることができた新発売キットは1/144ベストメカコレクションのガンダム (REVIVAL Ver.)だけであった。

もちろん、もっと能動的に入手をしようと頑張れば手に入っていたキットも多かったに違いない。しかしながら、コロナ禍での転売横行以来、キットを収奪する人たちと競うのが「疲れた」「馬鹿らしくなってしまった」というのは、たしかにある。

転売屋が勝手に目を付け、勝手に根こそぎ在庫をさらっていく。しかもその多くが、MSの劇中の活躍も、パイロットも、型番すらも把握していない…こんなに理不尽な話はない。

ただ、こういった状況も間もなく緩和される明るい兆しがある。バンダイは25年1月に、お膝元の静岡で新たな工場の竣工を開始しており、この工場のラインが予定では、今年の夏あたりに稼働開始となると告知している。

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「バンダイホビーセンター」新工場 外観イメージ

弊誌などが昨年11月に本件について記事で報じているが、新工場の稼働によって、生産能力は全体で23年度比の35%ほどの増産が可能になるとのことなので、これが転売にかかる品薄の解消に繋がる可能性は高い。

バンダイは公式サイト上のリリースにおいて、新工場の本格稼働は26年度になるとアナウンスしており、早ければ今年の夏には転売屋がガンプラを買い占めるメリットが薄くなるほど、市場にキットが出回るのかもしれない。

つとに最近は劇場公開される作品に関連したキットは軒並み早々にファン重要と転売目的によって売り場から消えてしまう。Netflixで配信されていた『機動戦士ガンダム 復讐のレクイエム』登場のMSキットもまた同様であった。

魅力的な新作に登場するMSのガンプラ入手難は、いちファンとしてもかなりフラストレーションをおぼえるものであったため、今は新工場の本格稼働に期待したい。「買うために努力をするのが当たり前」というのは我慢の範疇とも言えるが、こう何年も続くと流石に、趣味でガンプラに向き合う人にとってはなかなか酷な話だ。

【参考】株式会社BANDAI SPIRITS
「バンダイホビーセンター」新工場 2025年1月竣工 同年夏頃稼働開始

著者 松本ミゾレ