【解説】なぜ今?任天堂、パルワールド開発元を提訴…争点はあくまで「特許」公式声明の“言い分”に批判相次ぐ


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任天堂は19日、ゲーム「パルワールド」を運営するポケットペア社に対して特許権侵害訴訟の提起を株式会社ポケモンと共同で行ったと発表し、ゲーム業界内外で多くの注目を集めています。ここでは任天堂とポケットペアそれぞれの声明とともに、経緯をおさらいします。

「パルワールド」は、2024年1月にアーリーアクセス版をリリースし、1カ月で総プレイヤー数2,500万を突破するヒットを記録したPC対応ゲーム。広大な世界で不思議な生物「パル」を集め、戦闘や建築、農業、工場労働などを行わせるオープンワールドサバイバルクラフトタイトルとして、Xboxでも記録的な人気となっていました。

そんな同作、来週に開催される東京ゲームショウ(TGS)への出展を控えていたものの、このタイミングでの訴訟提起が任天堂から発表。ポケットペアにとって大きな痛手となる可能性があります。

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争点はデザインというより「特許」

同作と「ポケモン」とをめぐっては、かねてよりゲーム内デザインやテイストが似ていることについて賛否が分かれる一方、爆発的ヒットの要因でもありました。しかし、今回任天堂の発表では「この訴訟は、被告が開発・販売するゲーム『Palworld / パルワールド』が複数の特許権を侵害しているとして、侵害行為の差止及び損害賠償を求めるものです」との表記がありました。

つまり、今回の提訴の中心的な争点は「ポケモンっぽい見た目」といった著作権の観点によるものではなく、任天堂側が多く保有しているゲームシステム関連特許への抵触であることがうかがえます。なお、現在本件は提訴のみの発表であり、抵触すると主張する特許の具体的な内容は明らかにされていません。

任天堂と特許をめぐっては、しばしばコロプラとの事例が引き合いに出されます。「白猫プロジェクト」が任天堂の特許を侵害しているとして提訴したもので、最終的に2021年8月、コロプラが33億円の和解金を支払う形で和解が成立しました。ゲーム関連会社が保有する特許には非常に基礎的なものも多く含まれており、競合他社だとしても関知しない態度をとることもあれば、何らかの理由で特定の相手のみに対して訴訟を提起することもありえます。

まるで株ポケ?7月にソニー協業でIP成長図る

ここで少し前のニュースを振り返りましょう。ポケットペア関連の動きとして、ソニー系2社との協業が今年7月に発表され、話題になりました。ソニー・ミュージックエンタテインメント(SME)、アニプレックスと共同で「パルワールド」の新会社を設立したというもので、設立理由は「ライセンス事業を推進するため」と説明。

国内外におけるライセンス事業を一元管理し、IPの多角的展開と拡大を目指す、いわば「パルワールド版株ポケ(株式会社ポケモン)」といったところかもしれません。ソニーの音楽部門であるSMEや『鬼滅の刃』などを大ヒットに導いたアニプレックスとの連携で多面的な展開を進めるほか、商品化についてもすでに中国国内のイベントでアクションを起こしていました。

そうした状況は任天堂やポケモン側にとって不利益を与えかねない話でもあるほか、何より「ポケモン」というブランドにも影響が波及しそうです。これが今回の訴訟提起の直接的なきっかけとまではいかないまでも、「長年の努力により築き上げてきた当社の大切な知的財産を保護する」との任天堂側のコメントを見れば、一つの引き金になっている可能性もありそうです。

即日に公式声明、インディーゲーム開発者からは批判も

そんな世間が注目する本件ですが、ポケットペアは訴訟提起に対して即日に公式声明を発表。訴状を受理できていないなどの理由から「パルワールドの運営及び提供においても、中断や変更の予定はございません」と述べつつ、「今回の訴訟により、ゲーム開発以外の問題に多くの時間を割かざるを得ない可能性がある状況は非常に残念」「ファンの皆様のため、そしてインディーゲーム開発者が自由な発想を妨げられ萎縮することがないよう、最善を尽くしてまいります」とコメントしました。

これには多くの反応とともに「まるでインディーゲーム開発者を代表したような言い分」などと批判的な意見も寄せられています。また、声明では「当社は東京を拠点とする小規模なインディーゲーム開発会社です」としていますが、売上高推測や先の協業を鑑みれば「小規模ではない」とも言われています。

そして、「任天堂が開発者の自由な発想を妨げる可能性がある」との主張に対しては、インディーゲーム特化型の発表番組を設けたり、開発者カンファレンスに協賛したりする事実もあるなど、むしろ積極的であるとして話題になっていました。

特許関係の訴訟となると、解決や和解まで数年をゆうに超す事例もありますが、ポケットペアがどのようにしてこの訴訟に対応し、ゲーム開発を続けていくのかについても含め、今後の展開を注視したいところです。

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市井

著者 市井
オタク総研 媒体統括。専門領域はアニメ、テクノロジー(ガジェット)、プログラミング、コンテンツビジネス

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