『劇場版ブルーロック -EPISODE 凪-』玲王の複雑な心境が切ない “青い監獄”が凪に与えた変化


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4月19日(金)より全国の劇場にて公開が始まった『劇場版ブルーロック -EPISODE 凪-』。講談社「週刊少年マガジン」にて連載中、累計発行部数3000万部を突破する同名漫画(原作・金城宗幸、作画・ノ村優介)を原作とする本作は2021年にTVアニメが放送。この度待望の新作として劇場公開が行われた。

ここでは本作の見どころ、そしてメインキャラクターである凪誠士郎と御影玲王の関係の変化について迫りたい。

※以下、映画のあらすじ及び本編の内容が含まれます。ご注意ください。

凪誠士郎の視点が特徴的な劇場版

“ブルーロック(青い監獄)”に集められた300人の高校生FWたちが、世界一のストライカーを目指してサッカーでデスゲームのように戦う。今作では、本編の主人公である潔世一(以降「潔」)ではなく、天才キャラクター・凪誠士郎(以降「凪」)が主人公となる。TVアニメの内容をふまえつつ、凪の視点で新しい物語を見せていく。

凪の視点は、一味違った角度からブルーロックを映し出す。たとえば、強化指定選手に選ばれて集まった会場で、絵心甚八がブルーロックについて演説するシーン。演説を聞いて真っ先に参加を決めて扉の向こうへ進んだ潔だったが、実は凪と友人である御影玲王(以降「玲王」)は最後まで残っていた。凪が帰ろうとするのを玲王が説得して参加を決めるという、凪視点ならではの新しいシーンが見られるのだ。

まるで凪にふられたような玲王が切ない

本作においてカギになるのが、ズバリ凪と玲王の関係性の変化。2人は白宝高校に通う高校生で、凪はサッカーに微塵も興味がなかった。玲王に誘われてサッカーを始めてみたところ、試合中に天才的なプレーを見せる。2人でワールドカップを獲るという夢ができた玲王は、いつもめんどくさがっている凪を先導してひっぱる役回りをするのだ。その関係を2人は“パートナー”と呼んでいる。最強タッグはこれからも共に戦うかのように見える。

しかし、凪はブルーロックを通して変化する――めんどくさいといい、サッカーを楽しいと思ったことがなかった凪を変えたきっかけが、一次選考でのチームZとの試合だ。凪はサッカーに熱くなる理由が分からず、心にもやもやを抱えていた。だが、懸命に戦う潔の姿を見て、好奇心に近い感情が芽生える。チームZの猛攻をうけ、凪はサッカーを通して自分を試したくなったのだ。その感情が、凪をサッカーの楽しさに目覚めさせる。

二次選考では、3人1組でチームを作ることになる。もちろん凪と組むつもりだった玲王だったが、凪は潔のチームに入った。 “悔しさ”という感情の正体を知るために潔と先に進む凪を見て、打ちひしがれる玲王。なぜ、玲王はここまで凪に執着するのだろうか。

玲王は御曹司で、人生で欲しいものは全て手に入れてきた。そんな中で、生まれて初めて手に入らなかったのが凪だ。一方で、玲王はブルーロックで変化していく凪に対してうれしさも感じていた。一番欲しい宝物である凪が自分から離れて行ってしまった寂しさと、サッカーに魅せられて変化する凪を見るうれしさ。相反する感情を抱えた玲王の心情は、グルグルと複雑に渦巻いている。変化していく凪に対して、玲王は置いてけぼりの状態になっていたのだ。涙を流しながら人間が変わっていく様を残酷だと痛感する玲王がつらく、切ない。

ブルーロックが引き出したストライカーの“エゴさ”

本作は凪による新しい視点が楽しめるだけでなく、凪と玲王の変化を追えるようになっている。ブルーロックでは、ストライカーの“エゴ”が試される。ブルーロックや潔たちの影響でエゴを引き出された結果、凪はサッカーの楽しさに目覚めた。それは同時に、玲王と2人で戦っていくという関係さえも変化させたのだ。ライバルとなった凪と玲王は、もう以前のようには戻らないのだろうか。(文:まわる まがり)

『劇場版ブルーロック -EPISODE 凪- 』作品情報

「めんどくさい」が口グセの高校2年生・凪 誠士郎は、日々を無気力に生きていた。
W杯優勝を夢見る同級生の御影玲王が、その才能を見つけだすまでは。

玲王に誘われるがままにサッカーを始めた凪は、圧倒的なサッカーセンスを発揮。
ある日、“ブルーロック(青い監獄)”プロジェクトの招待状が届く。
そこで待ち受けていたのは、潔 世一、蜂楽 廻、糸師 凛ら、全国から集められた選りすぐりのストライカーたちとの出会いだった。
強敵たちとの激闘の最中、ついに、<天才>凪 誠士郎に“覚醒”の瞬間が訪れる!!

<天才>は見つける者がいて初めてその輪郭を成す──。
今、天才ストライカー・凪 誠士郎のエゴが世界をアツくする!!

(C)金城宗幸・ノ村優介・講談社/「ブルーロック」製作委員会