【業界観測】テレビ朝日、アニメへ本格注力。『僕ヤバ』が過去最高の海外販売実績を記録
国内主要放送局のテレビ朝日を運営するテレビ朝日ホールディングスは29日、 自社の2023年3月期の決算を公表。決算説明会も開催し、財務状況や当期の業績、今後の方針や展開について投資家に向けて説明を行った。【不定期連載:アニメをもっと楽しむコラム】
説明会ではサイバーエージェントと共同出資するネット放送局「ABEMA」を中心としたインターネット方面での取り組みやコンテンツ発信拠点「メディアシティ」構想の説明が行われていたほか、2022年7月に社内に新たな事業部「アニメ・ゲーム事業部」を設置していたことが明らかとなり、アニメやゲーム分野への本格的な注力が示唆された。
テレビ朝日のアニメ戦略としては2020年4月より毎週土曜日深夜25時30分に「NUMAnimation」と呼ばれる深夜アニメ枠を初めて設立、製作委員会参画を含めた多面的な展開を行っていることで知られている。枠の設立以降、『ワールドトリガー』や『カッコウの許嫁』『ブルーロック』などを放送し、深夜アニメファンからは「テレ朝もアニメ、頑張ってるよね」という評価を得つつある。
※注: テレ朝系全国ネットでのアニメ枠はNUMAnimation枠のほかにANIMAZING!!!枠も存在するが、こちらは同じ朝日新聞社の関連会社である朝日放送グループホールディングスの枠であるため、テレビ朝日HDの直接管轄ではない
そして、NUMAnimation枠では2023年4月クールより秋田書店刊の人気シリーズを原作とするアニメ『僕の心のヤバイやつ』の放送をスタート。『ドラえもん』『からかい上手の高木さん』などの制作で知られるシンエイ動画とタッグを組んで制作された本作は毎週の放送のたびにTwitterで話題になっており、国内での配信も好調。
また、海外販路でも絶好調だと言い、当該発表資料によると、同作が「NUMAnimation枠として海外販売額過去最高」を記録したことが新たに明らかとなった。(前画像を参照)
同社はアニメ放送枠に加え、コンテンツ制作全般に対しても前向きな姿勢をとっており、本年4月には凸版印刷株式会社のグループ会社で電子書籍サービスを運営する株式会社BookLiveへの資本業務提携を発表した。この提携により同社は〈アニメ・実写化を目的としたオリジナルコンテンツの共同制作および二次利用展開に関する協業体制の構築〉と〈グループメディアとBookLiveのストア事業およびコミュニティ事業とのエコシステム構築による次世代クリエイターの獲得・育成〉の2つ分野における展開を目標にしている。
日本アニメの海外展開を巡っては、関連市場規模が2020年には10年前と比べ4倍の1兆2394億円にまで成長を見せており、今や日本のカルチャービジネスの中核に。経団連も2033年までに日本発コンテンツの海外市場規模を15〜20兆円に成長させることを目指すKPIを設定するなど「一大成長産業」として期待の声が各所で見られている。
そのような背景もありテレビ朝日としてはこの「アニメ・ゲーム事業の単独事業化」と「BookLiveの資本提携」には海外展開を含めた”アニメへの本格注力”という強い意気込み見られ、今後の展開への期待も伺える。
©桜井のりお(秋田書店)/僕ヤバ製作委員会