3年ぶりの”声出し”解禁に熱狂!伝統芸能✕ボカロで紡ぐ「超歌舞伎」イベントレポート=ニコニコ超会議2023


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去る4月29日と30日の2日間、千葉・幕張メッセにてニコニコ超会議2023が開催された。昨年の2年ぶりのリアル開催に続き、新型コロナウイルスの収束に伴い今年は”声出し”がついに解禁され、両日で合わせて約12万人が熱狂した。

なかでも超会議の会期中、今年で8年目となる「伝統芸能」×「ニコニコ」×「最新技術」が融合した目玉企画「超歌舞伎 Powered by NTT」も上演され、こちらも声出しも解禁(要マスク着用)のうえで大いに盛り上がりを見せた。今回はそんな「超歌舞伎」からオフィシャルレポートが到着したので紹介したい。なお、超歌舞伎2023・幕張公演の模様は、ニコニコ生放送で2023年5月30日(火)まで視聴可能なので本編もぜひチェックしていただきたい。

【ニコニコ超会議2023記事一覧】イベント情報から現地レポートまで

4月29日初日の本公演、まずは冒頭、幕が開いて裃(かみしも)姿の獅童が「どうもありがとね!」と花道へ歩んでいくと、早速客席のあちこちから「待ってました!」「萬屋(獅童の屋号)!」と声が掛かる。思わず獅童も「嬉しいね、客席と演者が一体になる、これこそが超歌舞伎だよね」と笑顔を見せ、瞬時に双方の距離がグッと縮まった。

「今日は思いきり声援を送ってください……3年間待たせたな!」と呼びかけると、獅童のイメージカラーである赤のペンライトがそこかしこで揺れ、今回もチームワークはバッチリ。
ここで巨大スクリーンに、NTTが研究開発を進める最新技術「Another Me」を使った「獅童ツイン」が登場。
これは昨年4都市での劇場公演で初披露され話題を呼んだ技術で、獅童の動きや声色などをAIに学習させ、デジタル空間上に再現された、まさに“もうひとりの獅童”。
「獅童ツイン」と本人が舞台上で言葉を掛け合うと、客席からはどよめきが。昨年より進化した獅童ツインの、幕張メッセでの初お目見得となった。

続いてバーチャル・シンガー初音ミクが登場し、獅童と並んで正面でご挨拶。
通常ならここで本編に入るところだが、初日の獅童は「まだまだ(MCのおしゃべりを)やめませんからね」と再び立ち上がり、時にユーモラスに、時に感動的に、過去の超歌舞伎の思い出などを振り返りつつ語りかけた。

そして「準備はいいですか!!」というロックな叫びで空気は一変、ダイナミックなオープニング映像へなだれ込み、観るものを一気に「超歌舞伎」の世界へさらっていった。

今回再演された『御伽草紙戀姿絵(おとぎぞうしこいのすがたえ)』は、土蜘蛛伝説(つちぐもでんせつ)が題材。
七綾太夫(ななあやだゆう)と、源頼光(みなもとのよりみつ)の恋を軸に、日本を魔界にしようと企む女郎蜘蛛(じょろうぐも)の精や山姥茨木婆(やまんばいばらぎばば)といった物の怪たちの野望の顛末と、勇ましい平井保昌(ひらいのやすまさ)と袴垂保輔(はかまだれやすすけ)兄弟の活躍を描き、壮大な悪との戦いが展開となっている。

獅童は、七綾太夫に想いを寄せる気品漂う源頼光と、荒々しい盗賊・袴垂保輔という対極的な二役を演じ、その演じ分けも鮮やか。
お家のため、化物退治のため、保輔が命を捨てる場面、心の奥底に隠していた思いを兄に吐露する台詞は涙を誘う。中村蝶紫の妖気漂う山姥茨木婆役は存在感たっぷりだ。

澤村國矢演じる頼光の重臣・平井保昌役は大きく、颯爽としたかっこよさ。清々しい奴萬平の中村獅一は、立廻りの手を付ける立師でも活躍した。
様式美をしっかり見せながら工夫を凝らした立廻りや、バク転、宙返りなど、アクロバティックな技を生き生きと見せる俳優たち、また、華やかに舞い踊る女流舞踊家たちと、超歌舞伎ならではの多彩な顔ぶれが揃った座組は心躍る。

そして昨年に続き、獅童の息子・小川陽喜(5歳)も怪力で知られる坂田怪童丸金時役で大活躍!
巨大蜘蛛を踏みつけ、小さな体で大きく見得をして、派手な立廻りを堂々とやってのける姿は勇ましい。

初音ミクは全盛を誇る傾城・七綾太夫役を艶やかに、くっきりと演じる。
拍子舞、しっとり唄い踊る姿も、指先まで美しい!

獅童演じる保輔が、「お前の心を盗みに参った」と口説くように見せかけて七綾太夫を斬る場面は、驚きの展開。太夫の亡魂と女郎蜘蛛が合体し、発光しながらみるみる隈取が現れ、悪へと変化していく場面は圧巻だ。この初音ミクの闇落ち、悪役は同作の大きな見どころ。
バーチャル・シンガー鏡音リン&レンの大薩摩(勇壮な唄と三味線演奏)も物語を大いに盛り上げる。

芝居心あふれるアナログ演出と、デジタル技術の融合は超歌舞伎の特色のひとつ。
舞台上の俳優と3D映像がリアルタイムで同じ動きを見せるNTTの超高臨場感通信技術「Kirari!」を使って、茨木婆が見せた「リアルタイム被写体抽出技術(分身の術)」はまさに壮大なデジタル妖術。

超歌舞伎では、獅童に「萬屋(よろずや)!」、初音ミクに「初音屋!」とユーザーのコメントが画面に踊るが、ユニークなのは、女流舞踊家たちには「はなびら屋!」、NTTの最新技術には「電話屋(でんわや)!」と、ユーザーが発明した自由な大向うが掛かるところ。
獅童&陽喜親子には「ちちお屋!」「ジュニ屋!」、蝶紫演じる茨木婆には「婆屋(ばあや)」、巨大蜘蛛の役者や蜘蛛の眷属をつとめるアクション俳優たちに「タランチュラ屋!」、早替わりの場面で「早すぎ屋!」というコメントが掛かるのもシャレが効いている。
さまざまな思いが大量のコメントによって可視化され、舞台と観客、「それぞれの場所」で画面を見つめるユーザーが一緒に遊ぶ感覚が味わえた。

頼光主従に襲いかかる蜘蛛との立廻りは、これまた歌舞伎らしさが詰まった場面。
頼光がゴムのように伸びる素材でできた蜘蛛の糸をかき分けて戦う場面や、和紙でできた蜘蛛の糸「千筋の糸」が紙テープのように舞台にパッと散る様は見事で、決死の激しい立廻りを見せる場面は手に汗握るハイライト。ラスボス感あふれる初音ミクに観客は大興奮!

最強の敵に苦戦する頼光が「いかに三千世界の人々よ、数多(あまた)の人の言の葉と白き炎(ほむら)を」と呼びかけると、観客は即座に白いペンライトを灯し、画面もユーザーが打ち込むコメントで白一色に。
dorikoが作詞・作曲した劇中曲『ロミオとシンデレラ』に合わせ、力を振り絞るようなラストファイトは、バーチャルとリアルの融合も目覚ましい進化!
最後には化生の執心が鎮められ、平和な世界が戻ってきた。

ラストは和服姿の初音ミクがギターをかき鳴らしながら歌い、なんと獅童が客席2階から登場。「もっともっと!」と煽りながら客席を走り抜けていくと客席のテンションはマックスに。
金の吹雪が降り注ぎ、最高潮の盛り上がりと熱狂の中、いつまでも拍手が鳴り止まなかった。

なお今回、30日13時公演には幕張メッセ公演初となる、澤村國矢が源頼光/袴垂保輔を演じるリミテッド・バージョンが開催され、超歌舞伎を初演時から支えてきた國矢が、確かな技術で、熱を持って頼もしく中心を担う姿に、長年見守ってきたファンは文句なしに感動しただろう。
そして、本公演で陽喜が演じた金時役を獅童がパワフルで豪快に、國矢が演じた保昌役を獅一が誠実に真っ直ぐに演じた姿も印象深い。
次世代の俳優たちに活躍の場を、という獅童の思いからはじまったリミテッド・バージョン。

▼リミテッド・バージョン:澤村國矢主演

カーテンコールでは、ファンからの大きな歓声と拍手を全身で受け止める國矢の背中を、獅童も感慨深げに見つめていた。
同じ役でも別の俳優が演じると、角度の違う魅力が見えてくる――
歌舞伎ならではの魅力をたった2日間で味わえる大きな挑戦も、超歌舞伎ならではだった。

-超歌舞伎 Powered by NTT公演 : 御伽草紙戀姿絵(おとぎぞうしこいのすがたえ) –
◆日 時 : 4月29日(土)【第一部】13:00〜/【第二部】16:00
4月30日(日)【第一部】13:00〜(リミテッド・バージョン)/【第二部】16:00〜
◆出演者 : <本公演>
源朝臣頼光 / 袴垂保輔:中村獅童
傾城七綾太夫実は将門息女七綾姫:初音ミク
坂田怪童丸金時:小川陽喜
奴萬平:中村獅一
平井保昌:澤村國矢
山姥茨木婆:中村蝶紫  ほか
<リミテッド・バージョン>
源朝臣頼光 / 袴垂保輔:澤村國矢
傾城七綾太夫実は将門息女七綾姫:初音ミク
平井保昌:中村獅一
山姥茨木婆:中村蝶紫
坂田怪童丸金時:中村獅童  ほか
◆脚 本 : 松岡亮
◆演出・振付 : 藤間勘十郎
◆劇中曲 :  『ロミオとシンデレラ』 /作詞・作曲 doriko(https://www.nicovideo.jp/watch/sm6666016
◆主 催 : ニコニコ超会議実行委員会
◆製 作 : 松竹株式会社/株式会社ドワンゴ
◆制作協力 : クリプトン・フューチャー・メディア株式会社
◆超歌舞伎協賛/技術協力 : NTT
◆チケット価格 : <本公演>超プラチナチケット 12,000円 / 超アリーナS席 8,000 円 / 超アリーナA席 6,000 円
<リミテッド・バージョン>超プラチナチケット 9,000円 / 超アリーナS席 6,000 円 / 超アリーナA席 4,000 円
※「ニコニコ超会議2023」入場券つき
◆チケット販売 :
https://dwango-ticket.jp/project/NeiRjJrrFK(ドワンゴチケット)
https://eplus.jp/chokabuki/(イープラス)
※チケットは先着順販売のため、売切次第終了
◆視聴URL(視聴無料):<ニコニコ>
2023年4月29日(土) 13時~ https://live.nicovideo.jp/watch/lv340135037
2023年4月29日(土) 16時~ https://live.nicovideo.jp/watch/lv340135219
2023年4月30日(日) 13時~ https://live.nicovideo.jp/watch/lv340135240
2023年4月30日(日) 16時~ https://live.nicovideo.jp/watch/lv340135272

オタク総研編集部

著者 オタク総研編集部
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