プラモ35%増産へ―バンダイの“新工場”に潜入&考察 静岡に「ガンプラシティ」は生まれるか?


プラモ35%増産へ―バンダイの“新工場”に潜入&考察 静岡に「ガンプラシティ」は生まれるか?

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此度の新工場は、プラモデルに対する市民の関心を掘り起こすと同時に、静岡市に巨額の税収を与える主幹産業セクターとしてその存在感を発揮するだろう。だが、一方で静岡市民がプラモデルに特段熱心な人々というわけではないことにも言及する必要がある。

現に「プラモデルってどこで買えるの?」と子供に聞かれた時、それにはっきり答えられる大人はどれだけいるのだろうか。駿河屋か家電量販店、或いは個人経営の模型店か。静岡市には、タムタムもイエローサブマリンも進出していない。

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さらに、近年では娯楽はモノですらなくなっている。アニメ、ゲーム、そしてそれらをいつでもどこでも楽しめるスマートフォンという通信機器は、人々の「趣味の在り方」を大きく変えてしまった。

ただし、プラモデル産業にとって幸いなのはプラモデルはアニメやゲームと極めて親和性が高いという点だ。

静岡市は「ハーシー」になれるか

憧れのモビルスーツのプラモデルがどのような流れで生産されるのか。それを一般来訪者が見学することができるPDIIは、そう遠くないうちに周辺地域を「ガンプラのメッカ」に変えていくだろう。

もしかしたら、PDIIを中心にした半径数km以内が「チョコレート都市ハーシー」のようになっていくかもしれない。

アメリカのチョコレートメーカーのハーシーは、菓子職人のミルトン・ハーシーが設立した企業である。決して豊かな家庭の出身というわけでなく、それ故にハーシーは「労働者への福利厚生」を最大限充実させようと考え、極端な発想でそれを実行に移した。「労働者の楽園」を作ってしまったのだ。

日々チョコレートを作っている労働者とその家族のために、様々な娯楽施設を含んだ一大都市を生み出そう。住宅地だけでなく、学校、劇場、映画館、教会、郵便局、そして遊園地まで。チョコレート工場で働く労働者の安住の地、それがペンシルベニア州ハーシーである。

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PDIIから僅かに南下して東海道を跨いだ先には、様々な大規模再開発が進行中の東静岡地区。JR東海道線の駅があるため、交通の便も良好と言えるレベルだ。ここが「ガンプラ都市」になれる条件は、十分に揃っている。

あとは、当の静岡市民が今以上にプラモデル産業に関心を示し、自らの手でプラモデルを組み上げるかにかかっている。主幹産業の成長には、地元住民の熱意が必要不可欠だ。そうしたこともしっかり考慮されているPDIIと併設ミュージアムの完成により、プラモデルという娯楽がより身近なものになるだろう。

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著者 澤田真一
静岡県在住。経済メディア、IT系メディア、ゲームメディア等で記事を執筆。東南アジア諸国のビジネス、文化に関する情報を頻繁に配信。