新作アニメでBlu-ray発売中止の事案発生…最終話は半年間放送されず、制作会社の“失踪”可能性も指摘
2024年放送の新作テレビアニメ「ささやくように恋を唄う」の製作委員会は1月7日、NBCユニバーサル・エンターテイメントジャパンを通じて、Blu-ray全4巻の発売中止を発表した。同作品は2024年春季に放送開始されたものの、最終話までの放送完了までに約半年を要する異例の展開となっており、心配の声が集まっていた。
一迅社「コミック百合姫」の連載漫画を原作とする本作は2024年4月から6月にかけてテレビ朝日系全国ネットのNUMAnimation枠で放送。第10話までは毎週放送する形で進行したものの、クライマックスとなる文化祭編を描いた第11話、第12話は当時延期に。約半年の時を経て、先日12月28日深夜に未放送だった2話のオンエアを行ったことで完結した。
現在も各配信プラットフォームでの視聴は継続されているが、パッケージメディアでの展開は断念される結果に。NBCユニバーサル・エンターテイメントジャパンは本件に対しお詫びをした上で、各チャネルでの予約購入者への返金対応を進めていることを明らかにしている。
企業公式サイトはアクセス不能になっていた
放送延期や今回の発売中止については、制作に参画していたアニメーション制作会社クラウドハーツの制作体制に何らかの支障が生じていた可能性が指摘されている。これは昨年10月頃より、スタジオの公式サイト(cloudhearts.co.jp)へのアクセスができなくなったこと、同ドメインが失効していることが明らかになったことなどを契機に疑問視されていた。
現に、前述した最終話のオンエアでは、エンディングクレジットの制作からクラウドハーツの社名表記がなくなっており、依然として動向がつかめず、外部委託により制作から離れ、失踪や倒産の可能性も指摘されている状況だ。法人登記情報ベースでは現在も会社としては存続しているようだが、年金機構の保険加入状況は「1名」との記載になっており、運転に必要な制作体制は保持できていないものとみられる。(編注:業務委託のスタッフが在籍する場合もあるため、断言はできません)
今回のBlu-rayの発売中止は、こうした一連の問題の延長線上にあるとの見方が大勢となっている。本作は竹嶋えく氏の漫画を原作とし、作中バンド「SSGIRLS」を軸に先輩、後輩関係にある女子高校生同士の心情を描いたいわゆる「百合」作品として根強い支持を集めていた。
視聴者からは最終話を届けたことに対し感謝を寄せる声がある一方で、映像クオリティや制作体制に疑問を呈する意見も多い。また、同一原作でメディアミックス展開されていた『ささやくように恋を唄う』の舞台化をめぐっても、関係会社であるトライフルエンターテインメントが廃業したことで、こちらもBlu-rayは発売中止になっていた。
近年は毎クール50本〜70本ペースでアニメ作品が放送、公開されており、多様な作品が国内外からも注目され関心が高まっている一方で、作品数の多さがゆえに「放送延期」となる事例も少なからず存在している。