着せ恋・リコリコから学ぶ”質”が与える売れるアニメの好循環


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ここ近年のアニメにおける”売れる”最強の好循環とは何なのか。n次創作と質が形成する売れる作品の例とともに考察する。

“売れる”アニメの最強の循環

放送開始直後、瞬く間に注目を集め話数を重ねるごとに人気も上がる。そのようなアニメに共通して言えることとして、勿論タイミングや宣伝マーケティング等も影響するだろうが「アニメ自体の質」も大きく影響するのではないかと考える。

今回は2022年の冬に放送された「着せ恋」と今期放送中の「リコリコ」を例に取ってみる。
着せ恋は原作の人気は放送開始時に一定数はあるものの、人気の急上昇度が度を越して凄かったため本稿にて紹介した。一方完全オリジナルアニメのリコリコは0からのスタートとなり、その点を加味すれば着せ恋と同じくらいの人気急上昇を記録している。


『その着せ替え人形は恋をする』
原作  福田晋一(掲載 「ヤングガンガン」スクウェア・エニックス刊)
雛人形の顔を作る、「頭師」を目指す内気な男子高校生・五条新菜といつもクラスの輪の中心にいる人気者・喜多川海夢の物語。

 


『リコリス・リコイル』
犯罪を未然に防ぐ秘密組織「DA(Direct Attack)」のエージェントである少女たち「リコリス」の活動を描いた作品ラノベやマンガを原作としない完全新作オリジナルアニメ。Twitterフォロワー数が1週間で2倍=2.4万人増加を果たす今最注目の作品。

作画・ストーリーの良さが話題に

まず、第一段階として「放送開始直後の口コミ」が増えていく。これはどの作品でも同じことではあるが、一般的な作品と人気急上昇する作品の差は”質”が大きく影響を与えているのではないかと思われる。

ここで言う”質”とはストーリーや人気声優の起用は勿論だが、一番は目で見て一瞬で分かる作画・仕上げの良さが挙げられる。
冬アニメの着せ恋は元から超人気作だったSPY✕FAMILY等を手掛けるCloverWorksが制作。また、今期のリコリコはTHE神作画の老舗・A-1 Picturesが手掛ける。ヒット作・神作画を多く生み出す制作会社には一定のファンもいるため、それらのファンの中でまず注目される。

©福田晋一/SQUARE ENIX·「着せ恋」製作委員会
©福田晋一/SQUARE ENIX·「着せ恋」製作委員会

また、ストーリーの真新しさも人気急上昇の一因だろう。着せ恋の”コスプレ✕女子高生”然りリコリコの”銃✕女子高生”然りあまり見たことが無いジャンルの組み合わせが真新しさを生むのはもとより、「アイドル・アニメ」のようなテンプレート化した物よりかは注目されやすいのは言うまでもない。

感化されたクリエーターの作品が大バズり

質が上がるだけで注目されやすいのは当たり前。では作品をより多くの客層へ広めて人気を上げるにはある意味「最強の好循環」を生む必要がある。その最も効果的であろう循環とは「クリエーターを感化させる」ということ。

それらを最も成功させたと言えるのが先程から挙げている着せ恋だ。日本のみならず海外のクリエーターがイラストやコスプレといったn次創作を生み出し、それらの作品が大バズリ。
「10万いいね」を獲得するツイートが跡を絶たず、見かけたユーザーが注目を集める。

また、これらはアニメの質だけが起因するものではなく、Twitterが昨年導入した「トピック」機能によりいいね数やツイートインプレッションが稼ぎやすくなったこともバズる作品が増える理由だと考えられる。

作品の質とn次創作が相乗効果で売上UP

それらの「作画とストーリーといった質が話題→クリエーターが更にn次創作で知名度を上げる」というメカニズムがやがて形成。
それらが度重なり、結果としてアニメや原作全体が盛り上がり人気になる、ある意味究極の循環モデルが形成された。

そして、放送1ヶ月で着せ恋の原作は200万部以上を売り上げる。現在、原作の累計部数550万部・アニメ公式Twitterフォロワー数26万人を突破。
一般的にアニメ自体は全く売上にはつながらず、一番の売上につながるのはグッズや原作の購入なので、戦略としては大成功を収めた。

この点、着せ恋ほどではないものの放送開始3週間も満たないリコリコはそれらの好循環を構築している印象で、上記の好循環が人気急上昇の理由とは言い切れないものの理由の一つとしてあり得るのではないかと感じた。

着せ恋は各ストリーミングにて配信中・リコリコはTOKYO MXやBS11にて毎週土曜日23時30分より放送中。

市井

著者 市井
オタク総研媒体統括 兼 合同会社サブカル通信社執行役社長。専門領域はアニメ、テクノロジー(ガジェット)、プログラミング、コンテンツビジネス。PRプランニングやIP調達なども担当しています。新作アニメ、海外スマホ、東南アジア好き。