カドカワが伝える『リゼロ』の成功とは?アニメでは「挑戦」を重視…ゲーム化や遊技機、グッズなど横展開


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昨日10月2日よりアニメ第3期の放送が始まるなど、今なお最前線で人気を誇るライトノベル『Re: ゼロから始める異世界生活』。これまでゲーム化やグッズ販売、遊技機化などメディアミックスでの展開を進芽ている本作だが、版権元であるKADOKAWAも大きな成功事例と捉えているようだ。

KADOKAWAは1日、自社の強みやグループ各社の現状、今後の展開などを含めた「統合報告書」の2024年度版を投資家向けに公表。経営戦略に則る「7,000点のIPを創出する力」「IP価値を最大化するグローバル・メディアミックス展開」の2点を、多くの図解やコンテンツで紹介した。

マンガ、アニメ、ゲームと「共通の世界観」で横展開

そのなかで、後者についてはより具体性を持たせるために『Re:ゼロから始める異世界生活』(以降「リゼロ」)を「10周年を迎えた2024年現在も世界中でファンを獲得し続け、他のIPにとっても長期的な展開(LTV最大化)のモデルになっている」として、成功事例を年表方式で取り上げた。

Web掲載の小説をライトノベルとして書籍化し、全方位的にメディア展開。その相乗効果で大人気作品となる本作。その生い立ちについて、MF文庫J編集部の担当者は「当時Web小説の書籍化は今ほど一般的ではありませんでしたが、『この作品は多くの人に知ってもらわないといけない。誰かを“救う”作品だ』という焦燥にも似た感情に突き動かされ、(中略)書籍発売前の2013年から準備や計画を進めました」とビジネス視点ではないことを伝えた。

その後、原作に続く形でコミカライズ、アニメ化に着手することに。漫画化についてはアパンダの担当者から「少年漫画らしさを意識しました。もちろんキャラクターのかわいらしさは作品のウリですが、それだけに頼らない、続きが気になる構成やバトルの迫力など総合力の高い漫画を目指しました」と語られた。

また、アニメ化では固定観念にとらわれない挑戦を大事にしたとして、「発行部数ではなく、おもしろさのみで企画」「トレンドとは異なる主人公の描き方(中略)オープニング、エンディングやCMのカットなど、アニメのおもしろさを追求」したとして、それらが今の人気にも寄与していると分析している。

その後も2度のOVAとアニメ第2期、アニメ連動型のグッズ展開や企業とのコラボレーション強化、世界観の統一を意識したゲーム展開、パチンコ・パチスロ等遊技機への版権取引、海外販売を含めたマーチャンダイジングなどIP価値の最大化に注力した。

ゲームの自社パブリッシング推進も視野

そうして今に至るなか、新たな挑戦として編集部発の企画だというシリーズ10周年記念のソーシャルゲームの自社パブリッシングとして、8月26日にリリースした「Re:ゼロから始める異世界生活 Witch’s Re:surrection」を挙げた。(KADOKAWAとアカツキが共同企画)

大型ソーシャルゲームの自社パブリッシングは同社初のチャレンジだとして、コンシューマタイトル開発で成長を続けるグループ内ゲーム事業とのシナジー発揮を期待している。『リゼロ』で得られたIP軸展開の知見を活かした展開を今後も行う方針を示している。

市井

著者 市井
オタク総研媒体統括 兼 合同会社サブカル通信社執行役社長。専門領域はアニメ、テクノロジー(ガジェット)、プログラミング、コンテンツビジネス。PRプランニングやIP調達なども担当しています。新作アニメ、海外スマホ、東南アジア好き。