『狼と香辛料』新版アニメが開幕、日米ハーフの主題歌アーティストが見た魅力とは


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ライトノベル『狼と香辛料』の完全新作アニメ化として展開されているTVアニメ『狼と香辛料 merchant meets the wise wolf』が4月1日(月)25時30分よりテレビ東京系列にて放送スタート。この度、同作のオープニング主題歌を担当した「Hana Hope」さんへのインタビューが到着。アーティストと言う目線で見た本作の魅力や展開がたっぷりと語られた。

──『狼と香辛料』の豊かな世界観に触れた時、どのような印象を持ちましたか?

以前放送していた『狼と香辛料』のアニメーションと、今回の『狼と香辛料 MERCHANT MEETS THE WISE WOLF』のいくつかのシーンを見させていただき、とてもワクワクしました。私の大好きなものに重ね合わせることができましたし、私自身自然が大好きなので『狼と香辛料』の世界は、私の理想や価値観にも近いように感じました。

Hana Hopesさん

──本作だけでなく、昨今Hanaさんはアニメやゲームの楽曲を歌うことが増えてきました。そういった作品との親和性の高さの理由についてはどう分析されていますか?

自分自身の声にどんな魅力があるのか、自覚はできていないんです。ただ、メジャーデビュー曲として歌った「flowers」は、自分の声にマッチした曲だなと思っていました。歌うことも楽しい曲です。バラードを歌うことが大好きなので、そこも評価してもらえたのかなと感じています。

──こんなにも素敵な声なのに、それは自覚されていないんでしょうか?

ありがとうございます(笑)。自分の感情が声に表れているとは感じていますが、それが聴き手にきちんと伝わっているのかどうかまでは確信が持てず……。その点については考え込んでしまうことがありますね。ただ、物語やストーリーテリングの作り込み方は以前より向上したように思います。
また、アニメの主題歌を担当することができて、アニメにもより関心が高まって、さらに日本語での表現方法もより学ぶことが出来ました。その結果、日本語と英語どちらも歌いながら日本で活動するアーティストとしての自分のアイデンティティが、より充実したものになったと感じています。

──「旅のゆくえ」をはじめて聴いたときは、どのような印象を持ちましたか?

とてもダイナミックな曲だなという印象がありました。以前の『狼と香辛料』のアニメーションを見た時にも「とても愛されている作品なんだな」と思ったんです。その世界を崩さないように、新しいシーズンに相応しい新鮮なアプローチを取り入れることを意識しながら、私なりのスタイルで歌い上げたいなと頑張りました。

「雄大な草原をイメージしながら」レコーディングで意識したこと

──日本語の一つひとつが美しい印象を受けました。歌詞を読まれたときはHanaさんはどのように感じましたか?

わたしも美しい言葉の歌詞だと思いました。特に〈手をつなぎ歩き続けたい〉のところは、心にじーんときて、完成した楽曲を聴いた時も改めて素晴らしいなと感じました。

──レコーディングではどのようなところに重点を置かれたのでしょうか。

歌う中でいちばん意識したのは、伸び伸びとした声です。雄大な草原をイメージしながら歌っていきました。ホロとロレンスのいつまでも続く旅であることを表現できるように、一つひとつの音符を大切にして、歌いました。それと同時に、ホロとロレンスの愛情や、旅が進むにつれて感じる不安など、複雑な気持ちを表したいなとも思っていました。

──コーラスが「旅のゆくえ」の奥深さをさらに彩っているように感じました。

この曲自体、これまで歌ってきた中でも難しい曲でした。中でもコーラスでは裏声を使って、どうしたら綺麗に聴かせられるかを色々トライしました。豊かな自然が広がっていくような印象があったので、ふたりの希望を表せられるようにと、意識しながらコーラスを重ねました。自分の感情を声に入れることができたように思います。

──『狼と香辛料』を見ている方に、曲を通じてどのようなメッセージを送りたいと考えられていたのでしょうか。

オープニングを観ている時、期待とワクワク感があると思います。皆さんが毎週楽しめるオープニングになったら嬉しいですね。この曲を聴いていろいろな感情が浮かんで現実から少しエスケープして、自分だけの旅の世界に、そして『狼と香辛料』の世界に没入してもらえたらと思っています。

また、1話、1話、とてもおもしろいエピソードが展開していきます。ワクワクする場面がありつつ、時に不安な感情も出てきます。アニメの中のストーリーと私の歌う「旅のゆくえ」をリンクさせて聴いていただき、ワクワク感を高めながら、物語の扉を開けていただけたら嬉しいです。

アーティストから見た『狼と香辛料』魅力は

──楽曲制作に携わったことで、改めて感じた『狼と香辛料』の魅力はありますか?

中世ヨーロッパを想像させる世界と歴史と人々の生活がとても興味深かったです。その時代の香りがとても魅力的だなと感じていました。それに加えて、“狼神”と名乗るホロの存在があって……と、ヨーロッパと日本の文化が混じり合っていて、とてもクリエイティブだなと思いました。

──Hanaさん自身も音楽を通して、いろいろな文化に触れてきているんだなと感じます。

そうですね。父がアメリカ人で母が日本人なので、どちらの国の音楽の文化を聴きながら育ってきたので、そういう意味では、私のやっている音楽もいろいろな面があると思います。「旅のゆくえ」も、音のまざり方がとても特徴的ですし、曲自体も、世界のポップスとJ-ポップの文化が混ざり合っているように思っています。

──「旅のゆくえ」の制作過程を経て、今後の音楽活動におけるインスピレーションもさらに豊かになっていきそうですね。

そうですね。文化の混ざりあいにとても影響をうけました。ホロというキャラクターの生き方に、私自身とても憧れているんです。そこで得た刺激を今後の楽曲制作におけるストーリーラインに入れていきたいです。

──ところで、タイトルが「旅のゆくえ」であるように、Hanaさんご自身も音楽を通じて独自の旅を続けていると感じられることはありますか。

はい。歌を作るとき、参加してくださるクリエイターの一人ひとりが自分のイマジネーション、クリエイティビティを持っていて。コラボレーションをするたびに、その方の頭の中に入って、その空間を旅するような感覚を味わっています。

もちろんその人の思考のすべてを理解できるわけではないのですが、分からないこともまたひとつのワクワクだと思っています。そうやって自分の中に取り入れていくのも、アーティストのひとつの役目だと考えています。

──その中で、今後目指したい場所や、行ってみたい場所はありますか?

本作を見て、中世ヨーロッパにとても興味を持ちました。実はヨーロッパにはまだ行ったことがないんです。行きたい国はたくさんあるのですが、特にポルトガルに興味があります。ポルトガルの建物のユニークさやクリエイティビティに惹かれますね。

──ヨーロッパを訪れる機会があったら、歌へのインスピレーションがたくさん湧きそうですね。

確かに、「旅のゆくえ」パート2ができるかもしれません(笑)。

──楽しみにしていますね。では『狼と香辛料 MERCHANT MEETS THE WISE WOLF』のファンに向けてメッセージをください。

この曲のレコーディングをしている時、心から楽しみながら歌いました。『狼と香辛料』にとても愛情を抱いています。それを歌声から皆さんに感じてもらえたらとても嬉しいです。皆さんといっしょにアニメを楽しみたいと思っています。さきほども話したこととも重なりますが、この曲を聴きながら、現実から少しだけエスケープして、アニメの世界に旅ができたら嬉しいです。この曲を通じて、少しでもリフレッシュしてもらえたら、私にとっては大きな喜びです。

──まさにそのような思いが、このタイトルには込められているのでしょうか?

そうですね。ホロとロレンスは、故郷に帰る目的で旅をしているんですけど、そこではさまざまなトラブルに見舞われます。ふたりの旅のゆくえはどうなっていくかは不確かではあるけれど、それでも前に進む力を持ち続けていれば、希望が見えてくる。そういう大切なメッセージを込めました。

『狼と香辛料 MERCHANT MEETS THE WISE WOLF』作品情報

若き行商人クラフト・ロレンスは、荷馬車を引く一頭の馬を相棒に、街から街へと商品を売り歩く日々を送っていた。
ある日、黄金色の麦畑が広がる小さな村を訪れた彼は、耳と尻尾を有する美しい少女と出会う。
「わっちの名前はホロ」
自身を“賢狼”と呼ぶホロは、豊穣を司る狼の化身だった――。
彼女の「遠く北にあるはずの故郷・ヨイツの森へ帰りたい」という望みを聞き、ロレンスとホロは北を目指す商売の旅の道連れとなる。だが行商人の旅には思いがけない波乱がつきもので……。
孤独だった行商人と、孤独だった狼の化身を乗せた馬車が、今、騒がしく走り始める。

原作:支倉凍砂(電撃文庫『狼と香辛料』/KADOKAWA刊)
アニメーション制作:パッショーネ
放送:2024年4月1日25:30よりテレ東ほかにて放送

©2024 支倉凍砂・KADOKAWA/ローエン商業組合

著者 編集部 アニメ情報担当