【新作】旅っていいよね…を“家で味わう”注目アニメ『ざつ旅』が面白い!ユルさの中にある工夫とは


【新作】旅っていいよね…を“家で味わう”注目アニメ『ざつ旅』が面白い!ユルさの中にある工夫とは

年齢を重ねるに連れ“日常系アニメ”に魅力を感じることが増えてきた。今期も『mono』『ひびめし(日々は過ぎれど飯うまし)』と、ゆるさ溢れる作品が次々と放送され、特に筆者の心をとらえたのが“旅”をテーマにした『ざつ旅-That’s Journey-』だ。

その面白さに衝撃を受け、アニメ視聴後すぐに企画を提出し今に至る。筆者の熱量が冷めない内に、本作のよさを存分に語っていきたい。※以下、第1旅〜第5旅に関する言及を含みます。ご注意ください

常識を塗り替えた“ざつ”さがクセになる

『ざつ旅-That’s Journey-』は石坂ケンタ氏による漫画作品で、KADOKAWA「電撃マオウ」にて現在連載中。漫画家志望の女子大生・鈴ヶ森ちかは、ある日新作ネームを編集部へと持ち込むが、全てボツを食らってしまう。落ち込む彼女がテレビを観て思いついたのが、SNSのアンケート機能で行き先を決めるというまさに“運任せ”の旅。本作では新たな趣味に目覚めたちかや仲間たちの旅が描かれている。

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この作品の最も面白いところは、タイトルにもある“ざつ”さではないだろうか。旅行を思い立った際、大体の方は行き先やプランを事前に決めておき、ホテルも予約しておくことが多いはずだ。しかしちかの場合、行き先はアンケートによって決定し、さらには当日泊まる宿もその場で調べて決める……という運否天賦な旅となっている。話によっては事前に決まっていることがあるのも、作品の自由さや“ざつ”さを助長させていた。

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また、一味違う旅を楽しむ彼女のアカウントはX(旧:Twitter)上で実在しており、本編同様に趣味を謳歌する様子がうかがえる。お馴染みのアンケートも不定期で行っており、私たちが投票する側として参加できるのも本作ならではのポイントだ。解像度がさらに深まるアカウントの存在は、作品へと没頭するきっかけにもなるはずだ。

観光地への解像度が高まるさまざまな工夫

昨今では作品の舞台となった場所に足を運ぶ“聖地巡礼”も盛り上がりを見せており、実際に町おこしを成功させた自治体も存在する。『ざつ旅-That’s Journey-』でも実在する観光地がその都度登場しており、「実際に行ってみたい!」と感じたファンも多いだろう。

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アニメ公式サイトでは、ちかたちの旅を綴った「ざつ地図」が公開中。こちらではアニメカットとともに巡っていたスポットが順に記載され、聖地巡礼がしやすいページへと仕上がっている。話数を重ねるごとに、日本地図にピンが立てられていく仕掛けも面白い。

またアニメ本編ではナレーションによる解説も行われ、その地域や観光地のことが初見の方にもわかりやすく明示されていた。なお、本作でナレーションを務めるのは『情熱大陸』や「任天堂」のCMでも知られる窪田等さんである。このように細やかな部分にも目を向けると、よりアニメの魅力が感じられるだろう。

“ひとり旅の魅力”に焦点を当てた第5話

筆者が本作に惹かれた理由のひとつとして“ひとり旅が好き”ということが挙げられる。もちろん友人との旅行を楽しむこともあるが、誰にも縛られず自由気ままに行動でき、直前の予定変更も許されるのは何事にも代えがたいよさではないだろうか。

5月5日(月)に放送された第5旅の前半では久々に“ひとり”を満喫するちかの姿が描かれるとともに、ひとり旅の魅力にフォーカスしたストーリーが展開されていた。栃木県・那須烏山市へ訪問した彼女が本来予定になかった途中下車をした後、「こういう突発的な行動ができるのも、ひとり旅の良いところ」と口にするシーンは、まさに経験者として共感できる場面だった。

事前に下調べをせず、現地で見つけたが当たりだった時の喜びを理解している筆者としては、蕎麦屋でのひと時を堪能するシーンからも目が離せない。ゆるい旅行風景の中に描かれた「ひとり旅あるある」や友人の大切さを実感する場面は、旅好きにとって改めて考えさせられる内容になっていたはずだ。

次はどこへ向かい、どんな景色に出会うのか……。彼女たちの少し変わった“旅”の行く先をぜひ見届けていただきたい。

©石坂ケンタ/KADOKAWA/「ざつ旅」製作委員会

渡辺美咲

著者 渡辺美咲
スポーツアニメ・漫画作品を中心に愛するライター。定期的にコラボカフェや展覧会などにも足を運んでいる。