【解説】放送中のTVアニメ『グリザイアPT』もっと楽しむには“前日譚”も注目!無料で観られるOVA三部作
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2025年1月より、TVアニメ放映がスタートしているアニメ『グリザイア:ファントムトリガー』。本作へ繋がる前日譚として、2019年にOVA『グリザイア:ファントムトリガー THE ANIMATION』“01.SORD”、“02.ソウル・スピード”の2作が、2020年には“03.スターゲイザー”が劇場先行公開を経て、計3作品、発表されている。
TVアニメ『グリザイア:ファントムトリガー』の世界観をより深く理解するためには、このOVA版が特にオススメ。本稿では本日12日に公開した紹介記事・前編に続く後編として、OVA三部作をネタバレありで、それぞれ見どころを紹介していく。
【前編】美少女×ミリタリー、群像劇もミックス!新作アニメ『グリザイア:ファントムトリガー』新規でも楽しめる注目ポイント3選
「01.SORD」新任教師目線で“美少女×戦闘”のギャップを体感
有坂秋桜里は“市立美浜学園”に配属された新任教師。そこは、学校関係者からの複数の紹介や推薦がなければ入れない特殊な学校で、その実態は犯罪加害者やその身内など他に行き場のない若者や、社会的に迫害を受けている者を受け入れ先であること。また、将来的に国防に準ずる組織に就職する人材育成機関であることを知らされる。
彼女が担当するA組は、訓練を重ねて実践投入が可能となっている段階の学生が所属しており、深見レナ、獅子ヶ谷トーカ、鯨瀬・クリスティナ・桜子、狗駒ムラサキと、彼女たちにまとめ役となる伝習員(ハンドラー)の蒼井ハルトの5名が在籍。有坂は、このクラスでの一般教科を任されることとなる。
荒事とは無縁の世界で生きてきた有坂にとって、様々な事情を抱える学生たちに教師としてどう踏み込んでいいか悩む中、ハルトはメンバーたちを深く知るためにも、普段の訓練を見学してみてはどうかと提案。しかし、その常人離れしたスキルを目の当たりにし、ますます自信を喪失することとなる。
赴任早々、自身の進退に悩み、校外の公園で一人で落ち込んでいた有坂は、偶然にも反社会組織の武器の違法取引に巻き込まれ、拉致されることになる。学園長である仙石一縷の招集に応じ、事情を知ったA組メンバーは有坂を奪還するため、さっそく行動を開始する。
――記念すべきアニメ第1作は、世界観の紹介やメインキャラクターたちの人物紹介と、戦時におけるそれぞれのスキルも垣間見える、いわばお披露目回といったところだろうか。
メインキャラクターとなるのはA組に所属する5人のメンバーではあるが、今回の物語の進行を担うのは担任の有坂秋桜里である。彼女自身は母親が服役中という特殊な事情があるものの、戦闘や国防とは一切無縁であり、視聴者と同じ一般人の目線のキャラクターの視点があることで、より世界観を理解しやすいのではないだろうか。
前半は学校でのキャラクターたちの様子が描かれる日常パートとなっているが、有坂の拉致から始まる後半は一転して、それぞれの個性を生かしたスピーディーなアクションが楽しめる戦闘パートへ。
たった5人ではあるものの、戦闘のプロとして任務を受けているメンバーにとっては、日本の一反社会組織の殲滅は朝飯前。圧倒的な戦力差を持って、一方的に死体の山が積み重なっていく様子は、敵に同情するレベルである。
特に見どころと言えるのは、クリスによるサポートで次々と敵を暗殺するムラサキや、有無を言わせぬトーカのスナイピング、そして一人で複数の敵を相手にするレナの圧倒的な戦闘力など、それぞれの見せ場をスピーディーなカメラアクションで見せる戦闘シーン。可愛らしさと強さを併せ持つキャラクターたちの魅力が存分に楽しめる第1話だった。
「02.ソウル・スピード」本格派の闘争シーンで描く過去の関係
“市立美浜学園”の姉妹校“京船桜が丘”に所属する稲垣バニラと稲垣チョコの姉妹は、とある港にて護衛対象となる重体患者・トーマス・ベネディクトの引き渡しのため、船の到着を待っていた。しかし、対応に訪れた船員から、護衛対象者が消失したことを聞かされ、上官である宇川千尋に報告。事件に対処するために、“京船桜が丘”から“市立美浜学園”へ助力要請が行われた。
高性能のシギントシステム“タナトス・システム”によって、早々に拉致現場は特定したものの、A組と稲垣姉妹が到着した時には絶命して心臓が抜かれたーマス・ベネディクトの死体が転がるのみ。宇川のさらなる調査により、政府高官が自身の心疾患を治すため、心臓の提供者としてトーマス・ベネディクトを秘密裏に入国させるつもりだったことが判明。しかし、何者かの手によって心臓が奪われてしまったため、合同任務は心臓奪取へと移行する。
一方、最初の助力要請の時点で何か裏があると読んだハルトから、別途調査を命じられていたムラサキは、ロシア最大の犯罪組織の関与を探り当てる。原因は、組織のボスが同じく心臓疾患を抱えていたためではあるが、組織が違法的に横取りをしたわけではなく、仲介業者に政府高官の2倍の額を支払って、買い付けたことも判明した。
報酬の二重取りをしていると思われる仲介業者を追うべく、調査を続行するムラサキと並行して、ハルトたちは心臓の行方を追って再び行動を開始。紆余曲折を経て、心臓を手に入れたロシアの犯罪組織の配下の用心棒とレナが戦うことになるのだが、それが偶然にも浮浪児だった頃のレナと生活を共にした、義理の妹だったことが判明するのだった。
――第2話は、政府やロシアの犯罪組織、臓器売買の仲介業者など様々な組織が介入し、心臓の争奪戦が繰り広げられる。とはいえ、組織同士の武力的衝突のようなものではなく、裏で暗躍する別の勢力が、ハルトたちを翻弄するサスペンス要素が強いシナリオ。
また、“美浜学園”と同じく国防のための人材育成機関“京船桜が丘”から、稲垣バニラと稲垣チョコの姉妹も登場。可愛らしい見た目ながらも、命乞いする相手を躊躇なく撃ち殺したり、好戦的な性格も伺える。
さらにレナが浮浪児として路上生活を送っていた頃の義理の妹、井ノ原マキが登場。レナと共に殺し屋養成施設で訓練の日々を送り、その後、紆余曲折を経て、今回の事件に絡んだロシアの犯罪組織に用心棒として買われ、再会を果たすこととなった。
回想シーンでは、浮浪児として生活していた頃のレナの描写や、当時はおとなしい性格だったマキの描写など、今回、初めて個々のキャラクターの背景が深く掘り下げられる機会にもなった。
マキは長身で身体能力も高く、レナとの1対1の戦いでは、崖から落下した際のケガもあって、多少押されたものの、負けず劣らずの戦闘能力を発揮。その中でも、特に見どころとして、ふたりが繰り広げた銃撃戦の後の、素手でのタイマン勝負を挙げたい。
ボクシングスタイルの拳の応酬では、顔面にヒットすれば鈍い音と共に顔が歪み、ボディに当たれば肉に食い込む破裂音。ボロボロになりながらも、まだまだ余裕だと言わんばかりの不敵な笑みを見せながら、約2分間に渡って殴り合うシーンは、こちらも思わず手に力が入ってしまう熱い展開である。
マキは最終的にはハルトが“美浜学園”に誘い、A組に入ることに。以降、任務でもプライベートでもレナと一緒に行動することとなり、バディものとしての要素も盛り込まれていくことになる。
「03.スターゲイザー」相棒、先輩…壮烈なヒューマンドラマも楽しめる
フィリピンにて、山岳行動訓練の夏合宿を行うことになったA組のメンバーだったが、現地にて準備を進める中、姉妹校である“聖エール外国人学校”が絡んだ新たな任務が与えられる。内容は、フィリピンの武器密造組織の壊滅作戦から帰還していない同校の学生・九真城恵(グミ)の回収、もしくは処分。
詳細によればグミは作戦中の任務失敗より、撤退不能になったたため、司令部より見捨てられてしまったうえ、相棒である有泉志保が死亡。追い打ちをかけるように、見捨てた司令部から、命令無視による略式裁判のための出頭という理不尽な命令が下されるが、以降、連絡を絶って命令無視の単独行動を行っているという。
真面目で頑固な性格で、志保を姉のように慕っていたと聞いたハルトは、ひとりで敵討ちに向かったのではと予想する一方、トーカは志保が死亡したと聞き、激しく動揺する。
かつて、トーカは“聖エール外国人学校”でスナイパーの訓練をしていた過去があり、ペアを組んで敵の位置を観測するスポッターを務めたのが死亡した志保だったのだ。
グミからの連絡はないものの、無線を持っているのは間違いないと確認したハルトは、“タナトス・システム”を使って得た敵組織の隠れ家を、あえて伝えることを提案。ムラサキとトーカのふたりに、隠れ家の情報という餌に釣られるグミが、どこに潜伏するかを予測して追跡するよう命令を下すのであった。
――第3話は、草木が生い茂る密林での野戦任務と共同作戦での敵拠点の制圧がメインとなっており、A組のスナイパーであるトーカを中心にストーリーが展開。相棒だった志保との思い出や、トーカが背負っている両親との悲しい過去が掘り下げられるエピソードだ。
共同作戦に参加するのは、姉妹校“聖エール外国人学校”の無音暗殺部隊と山岳猟兵部隊で、ハルトの元には代表して各隊長のシルヴィアとベルベットが派遣される。作戦中は弾丸すら弾く黒を基調とした修道服を身に纏っており、ショットガンで敵を吹き飛ばしたり、容赦なく暗殺する様子は清楚なシスターのイメージとのギャップもあって、かなり強烈である。
一方で、物語のカギを握るのが、前述したトーカの過去のエピソードである。かつて、スナイパーとして活躍していた母が戦場で見捨てられ、その復讐のために同じくスナイパーであった父が作戦司令を暗殺し逃走。その後、山に身を隠していた父を狩りだしたのが幼いトーカであった。
慕っていた相棒の死と、復讐のために一人で戦場に赴くスナイパーが両親と重なり、自分と同じ悲しみを繰り返さないためにどうするべきか、同じ相棒を持ったスナイパーの先輩としてどう導くかを描くヒューマンドラマ的要素も感じられるシナリオとなっている。
そして、戦闘シーンはスナイパーのトーカがメインのエピソードということもあり、“聖エール外国人学校”との共闘がありつつ、緊迫感のある狙撃戦となる。ムラサキをスポッターに行動するトーカに対し、同等の戦力をひとりで見せつけるグミの凄まじいポテンシャルにも驚かされるシーンとなっている。
【前編】美少女×ミリタリー、群像劇もミックス!新作アニメ『グリザイア:ファントムトリガー』新規でも楽しめる注目ポイント3選
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