Amazon歴代一位も納得?実写版『【推しの子】』原作勢を驚かせた“改変”に注目 アニメの神回どう描いた


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11月28日からPrime Videoにて実写版であるドラマシリーズの世界独占配信がスタートした『【推しの子】』。原作・赤坂アカ、作画・横槍メンゴによる原作コミックスは累計発行部数2000万部を突破。昨日27日には日本のAmazonオリジナル作品で配信後30日間における、歴代一位の国内視聴数を記録する快挙を達成したことも明らかに。

そんな実写化をきっかけにさらに盛り上がりを見せている本作だが、本稿では特に注目したいポイントの多かった、第3話と第4話をもとに実写版『【推しの子】』を紹介していく。(※以下、第1話〜第4話に関する内容を含みます)

ぴえヨンの肉体をリアルに再現した野田クリスタル

星野アクアが恋愛リアリティショー番組『今からガチ恋始めます』に出演し、黒川あかねが炎上してしまう「恋愛リアリティショー編」が描かれる第3話。SNSでの誹謗中傷によって精神を追い込まれ、自殺までしようとするあかねの姿が観ていてつらいパートだ。

アクアが『今ガチ』に出ている最中、星野ルビーと有馬かなの前に“覆面筋トレ系YouTuber”であるぴえヨンが初登場。ぴえヨン役にはシークレットキャストとして野田クリスタル(マヂカルラブリー)が抜擢され、話題を集めた。2ヵ月間で10㎏もの体重を減量した野田は、ぴえヨンのムキムキなボディーを忠実に再現。特徴的な裏声もアニメで聞いた印象そのままで、見事にぴえヨンを演じきった。

一方で、後の「ファーストステージ編」にてB小町のレッスンをアクア扮するぴえヨンが協力する場面が原作では描かれるのだが、実写版では大胆にカット。実写ではアクアとぴえヨンの体格差はごまかせないため、再現が難しかったのだろう。こういった変更点は第4話でも見られ、実写化ならではの改変もひとつの面白さになってくる。

アニメの“神回”実写版ではよりドラマチックに

第3話の「恋愛リアリティショー編」においてアニメ視聴済みの人が一番気になっていたのは、あかねが星野アイを完全にトレースするシーンではないだろうか。アニメでは、アイをトレースした瞬間あかねの目に星が宿り、話し方までアイそっくりに。女王蜂の「メフィスト」が流れ出しエンディングに突入する一連の流れも完璧だった。そのため、SNSでも“神回”と呼ばれるほど大きな話題を呼んだ。

実写版では、あかねがアイをトレースする場所が夕日をバックにした海辺になっており、よりドラマチックな雰囲気に。あかねが振り向くと亡くなったはずのアイの姿が重なる演出によって、アクアがアイを思い出す様子を表現している。

アニメではあかねの見事なトレースにフォーカスした演出だったが、実写版ではあかねにアイの幻影を見たアクアの衝撃に重きを置いているように思う。後ろから夕日が差し込むあかねの姿はどこか現実離れしており、アイと重なるがゆえに「ただいま」というセリフが切ない。アクア役である櫻井海音の驚いた表情を浮かべながら言葉を失ってしまう演技が、あかねのトレースに説得力を持たせているのだ。

原作勢を驚かせた構成と設定の“改変”

第4話では、「ファーストステージ編」と「2.5次元舞台編」のシーンが交互に挟まりながら進行するという実写版独自の構成に。『東京ブレイド』のあらすじが原作と大きく変わっているうえに、地上波ドラマになっている点も大きな改変だ。

原作やアニメの内容を知っていると意表を突かれる改変の数々に、戸惑った人も多いかもしれない。だが、「この設定もありだ」と思わせるほど、物語は自然に進んでいく。そして、原作を読んだりアニメを観たりした人が、改変によって新鮮な気持ちで『【推しの子】』を観られる効果を生み出しているのだ。

また、第4話ではB小町のメンバーが乃木坂46のライブを観に行くシーンが。アイ役の齋藤飛鳥が乃木坂46の元メンバーであるため、現実との“繋がり”を感じるのがいい。齋藤の出演がきっかけで実写版『【推しの子】』に触れたファンにとっても、うれしいサプライズとなったに違いない。

構成や設定の大きな改変があり、実写化ならではの面白さが見えてきた第3話と第4話。原作のよさを生かしつつ、大胆ながらも絶妙な改変に成功している。実写化に不安を抱いていた視聴者に安心感を与え、さらに続きが観たくなるような高いクオリティに仕上がっているのが実写版『【推しの子】』だ。(文=まわるまがり)

©赤坂アカ×横槍メンゴ/集英社・東映

まわる まがり

著者 まわる まがり
主にアニメについての記事を書くライター。コラムや映画の作品評、マンガのレビューを手がける。