東宝、アニメ事業が半年売上300億円と飛躍…戦略を投資家にアピール 強みはズバリ「総合力」現場の声は


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東宝株式会社は10日、統合報告書の最新版を発表したなかで、同社が近年特に力を入れているアニメ事業に関する成長戦略を説明。同事業専用のスライドファイルを設けるなど、機関投資家に向け成長性をアピールした。

東宝は今年4月に発表した通期決算において約2年前に掲げていた中期計画のを達成し、過去最高益となった。なかでも成長著しいのはアニメ関連が内包する映像事業で、同社は「SPY×FAMILY」「呪術廻戦」「ヒロアカ」「ハイキュー」「フリーレン」「薬屋のひとりごと」など名だたる人気作品への製作出資を実施。直近の2四半期(半年間)の売上は306億7600万円にのぼり、前年同期比で2割成長を果たしている。

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先日公表された統合報告書では、今年2月までの一年間のアニメ事業の業績が過去最高を記録したことを紹介した。同期にはテレビアニメ『葬送のフリーレン』『薬屋のひとりごと』を同時展開したほか、劇場版作品として『僕のヒーローアカデミア』『ハイキュー!!』『SPY×FAMILY』を公開し、躍進の1年となった。

この怒涛の展開について、同社常務執行役員でエンタテインメントユニットアニメ本部長の大田圭二氏は「ビジネスとして積み上げてきたこれまでの10年の集大成」と評し、同事業の強みに「総合力」を挙げた。企画から配信、ライセンシング、パッケージ、劇場興行などを一貫して行える環境とともに、「原作の持ち味を活かし、優秀なクリエイターやスタッフ、スタジオと連携しながら、高品質なアニメ製作を行っています」と語る。

そして今後の重要な展開として、同氏および同社はGKIDS子会社化による、北米市場におけるアニメ配給の本格参入を挙げ、自社配給を展開する計画と説明。2032年までのあるべき姿について「強化された体制で最良の作品を送り出し、いくつかが東宝「オリジナル(Original)」作品となることを目指します」と意気込む。

「ファンパレ」などゲーム展開も好感触、現場の声は

また、統合報告書ではより現場に近い声も収録され、アニメ事業室長の武井克弘氏はプロデューサーの役割について独自の見解を示した。「アニメのプロデューサーは、映画や演劇以上にビジネス性を追求します。テレビシリーズでは放映収入が限定的なため、配信やグッズ化といった2次利用による収益モデルを常に構築する必要があるのです」。

そして二次利用、ライセンスビジネスの新たな形としてゲーム開発を挙げた。2021年に立ち上げたTOHO Gamesでは、『ゴジラ バトルライン』や『呪術廻戦ファントムパレード』などで成功を収めてたほか、2024年4月には「文芸グループ」を新設。漫画編集者、漫画家、小説家など多様な視点を取り入れオリジナルIPの創出に挑んでいる。

武井氏は「TOHO animationはアニメメーカーとしては後発です。だからこそ『考える』ことに力を入れ、ライバル他社の思考の先をいく必要がありました」と、同社の戦略的アプローチを強調。グローバル展開における課題についても「地政学リスクや各国・各地域の文化、風習を理解し、織り込む必要があります。表現の自由とこれらのリスクとのバランスを取りながら、ローカライズを進めることが重要です」との認識を示している。

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当社は今期『怪獣8号』やアニメ版『ヒロアカ』を放送し、来年1月からは『薬屋のひとりごと』第2期が控えるなど、さらなる飛躍が期待されている。

著者 編集部 経済・社会担当
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