今作の物語の舞台となるのは、ヒーローも怪獣もまだ現れていない地球。主人公ソラトは、そこに突如現れる巨大な生命体(怪獣)を前に、胸の奥から湧き上がる使命感に駆り立てられ、ウルトラマンオメガに変身して巨大生命体と戦い人々を守ります。「怪獣」という言葉が存在しない地球であることや、主人公が記憶喪失であることなど、これまでのウルトラマンとは一線を画す設定で繰り広げられる、新たなウルトラマン伝説、それが『ウルトラマンオメガ』なのです。

 Chapter.1これまでのウルトラマンとは一線を画す設定…込めた思いは

本作でメイン監督を務めるのは、『ウルトラマンコスモス』(2001)で助監督を務めて以降、様々な作品に参加して映画監督としての腕を磨き、2016年TV『ウルトラマンオーブ』以降全シリーズに監督として参加。『ウルトラマンR/B』(2018)や『ウルトラマンデッカー』(2022)でもメイン監督を務めた武居正能さん。今作は「ウルトラマンシリーズの原点に立ち返った」と話します。

「"なぜウルトラマンは地球を守るのか"という根源的なテーマを、ウルトラマン自身を通して描いた作品です。その中で、主人公のソラトを通して"やさしさ"・"愛"・"信頼"という言葉の意味を感じてもらえたら嬉しいです」と武居監督。またウルトラマンシリーズの数多くの作品に携わって来た経験から、「私の集大成的なシリーズにしたい」と話し、「新しいウルトラマンシリーズの開幕という位置付け。新しいウルトラマンシリーズにアプローチした作品です!」と、意気込みを明かしてくれました。

主人公のオオキダ ソラト/ウルトラマンオメガを演じるのは、これまで『ハイキュー!!』や『刀剣乱舞』など、いわゆる2.5次元を始めとした舞台を中心に活躍されて来たことで知られる近藤頌利さん。彼を起用したポイントを、監督は「説得力のある演技と目力」と話します。「ソラトというキャラクターは捉えどころがありません。その中でもしっかり伝え切れる演技力が、近藤さんにはありました。また"所作"がヒーローらしいカッコよさで、彼がウルトラマンならきっと子供たちも憧れてくれるのではないかと思いました」(武居監督)。

『ウルトラマンオメガ』特報映像

 Chapter.2主役俳優が熱弁する「やっぱりヒーローだ」と感じる瞬間

そんな期待を注がれている近藤さん、実は幼少期にウルトラマンや怪獣のソフビ人形で遊んだ経験があるそうで、「ウルトラマンが遊び相手だった」と話します。オーディションについては、野球の話(近藤さんが阪神ファンで監督が広島ファン)や、円谷プロの創立記念日と近藤さんの誕生日が同じであることなどの話題で盛り上がり、「作品に全く関係ないようなことを話している時間の方が長かったかもしれません(笑)」と振り返ります。

左:ウルトラマンオメガ/右:ソラト役・近藤頌利さん
左:ウルトラマンオメガ/右:ソラト役・近藤頌利さん

合格の知らせは電話で受け、意外と冷静で「そんなに若手でもないので、現場でどういった立ち振る舞いをしたらいいのかとか、準備は何をしたらいいのかとか、(現実的なことを)すぐに考えていました」とのこと。ただ電話を切ると嬉しさがこみ上げ、思わずガッツポーズを取り「オーディションでやった変身ポーズを鏡の前でやりました!」と、当時の喜びを教えてくれました。

近藤さんが演じるオオキド ソラトは、見た目は立派な青年ですが、記憶喪失もあってか内面は幼い子どものようで、最初はまだ言葉もたどたどしいという役柄です。会話もままならない役ということで、序盤の会話の演技は大変だったそう。「いつものような会話のテンポでは話せないので、奇妙な掛け合いになっていると思います。おそらく(話す)相手もやりづらかったと思います。ですが、それがリアルに近いのかなと思って演じました」(近藤)。

そして、ソラトは回を重ねるごとにどんどん成長して行くそうで、近藤さんはソラトについて「最初は"こいつが地球を守れるのか?"って思うんですけど、ふとした瞬間に"やっぱりヒーローだ"って感じる。それは1話を見ていただければ、めちゃくちゃわかってもらえると思います」とコメント。自身と似ているところもあるといい、「ソラトは人をすごく見るのですが、僕も人間観察は好きなので、ソラトが瞬きもせず人をジーッと見ているシーンは自分の中で気に入っています。ボーッとしているシーンも多く、ボーッとしている姿なんてなかなか撮ってもらえないので、そこは楽しかったです(笑)」(近藤)。

 Chapter.3監督が語る魅力的な画作りへのこだわりとは

作中でソラトは、並外れた身体能力を発揮したり、怪獣との戦闘後は猛烈に空腹を覚える設定があったりと、近藤さんのアクションシーンやコミカルな演技にも注目です。

さらに監督によれば、近藤さん演じるソラトと、ウルトラマンオメガを演じるスーツアクターが演技のポイントを合わせることで、二つのキャラクターの同一性を図ったとのこと。「人間体の時にやっている仕草と、巨大化後のポーズや仕草の印象を合わせるということをしました。代表的なのがオメガスコープという、右手を突き出すポーズです」(武居監督)。人間の時のソラトと、変身後のウルトラマンオメガが乖離しないよう、そこには細心の注意が払われています。

『ウルトラマンオメガ』場面カット
『ウルトラマンオメガ』場面カット

また『ウルトラマンオメガ』には他にも、ソラトと行動を共にする仲間として、ソラトとバディを組むホシミ コウセイ(吉田晴登さん)、生物学者の卵であるイチドウ アユム(工藤綾乃さん)が登場します。吉田晴登さんは幼い頃から数多くのTVドラマや映画に出演し、『宇宙刑事ギャバン THE MOVIE』(2012)、『ドライブサーガ 仮面ライダーチェイサー』(2016)などの特撮作品への出演経験があります。一方の工藤綾乃さんは『第12回全日本国民的美少女コンテスト』でグランプリとモデル部門賞のW受賞で芸能界入りし、『劇場版 怪談レストラン』(2010)で映画初出演を果たして以降、俳優として数多くの作品に出演。『HiGH&LOWシリーズ』(2015〜)や『牙狼〈GARO〉 神ノ牙-KAMINOKIBA-』(2018)などアクション作品への出演経験も持っています。

キャリア豊富な2人が演じる役について監督は、「ソラトが子供たちの憧れなら、コウセイは共感を持ってもらえるキャラクター。アユムは優しさがにじみ出る、明るい大人のお姉さん」と解説します。キャスティングのバランスについても「重要視したのは三人が上下関係もない、同じ目線でいられる関係性。それぞれがまったく異なるキャラクターを演じていますが、三人を見ていると自然と和むというような空気感です」と監督。3人によるユーモアたっぷりの会話劇や醸し出す雰囲気の良さも本作の見どころです。

 Chapter.4いろんな世代に観てもらいたい!監督に訊く"真新しさ"と注目ポイント

ウルトラマンシリーズの魅力は、何と言っても必殺技です。子どもの頃に誰もが一度は、必殺技を繰り出すポーズをマネしたことがあるのではないでしょうか。ウルトラマンオメガは、宇宙ブーメラン=「オメガスラッガー」や「レティクリュート光線」を繰り出すほか、味方怪獣である「メテオカイジュウ」たちがアーマーや武器に変形してメテオをパワーアップさせます。

大剣「レキネスカリバー」や、鋭いかぎ爪の「トライガロンクロー」は"なりきりアイテム(玩具)"としても人気が高まりそうです。「オメガスラッガー」や「メテオカイジュウ」の印象から、40代後半以上の世代であれば『ウルトラセブン』(1967)の「アイスラッガー」や「カプセル怪獣」を彷彿とするかもしれません。

「ファンの皆さんの中には“セブン”オマージュと思われる方もいかもしれませんが、スラッガーを使う表現は「ニュージェネレーションウルトラマン』(2013年の『ウルトラマンギンガ』以降のシリーズ)では度々描いて来ており、本作ではあくまでも“ウルトラマンらしい要素”として設定に盛り込みました。初代マンタイプとセブンタイプの特徴を併せ持つ、新しい種族というイメージです」(武居監督)

武居監督から、本作『ウルトラマンオメガ』の、過去のウルトラマンシリーズとの違いや注目ポイントを伺いました。

「まず大きな特徴として、ウルトラマンの顔が赤いということ。デザイン的にノーマルタイプのウルトラマンの顔が赤いのは、非常に珍しいと思います。また怪獣のデザインは、あくまでも地球の在来生物をモチーフにした"巨大生物"であることがこだわりポイントです。必ずデザインのどこかに既存の生物のモチーフがあります。そしてソラトがウルトラマンだということが、第1話でいきなり地球人にバレるという展開。正体を隠そうとしないウルトラマンというのも珍しいかなと思います。あとは主人公が記憶消失で、目的がわからないという部分でしょうか。ここはお話の根幹なのであまり深くは触れられませんが、実際に重要なファクターです」(武居監督)。

『ウルトラマンオメガ』場面カット
『ウルトラマンオメガ』場面カット

 Chapter.5ウルトラマンオメガは「友情の物語」新たなシリーズの幕開けに注目

記憶喪失であるが故に、純真無垢なまま人間として成長しながら怪獣と戦うソラト。人間には巨大な怪獣を打ち倒す力も必殺技も無く、これまでのウルトラマンは人間と融合することで人間を理解し、人間を守る高位の存在として描かれて来ました。しかしソラトは、これらの過去シリーズとは事情が異なります。

もしもウルトラマンが地球外の宇宙人ではなく我々人間の中から生まれたら、どのような感情を持ち、どのような気持ちで怪獣と戦うのか…。そんな疑問に一石を投じる作品にもなっているかもしれません。近藤さんは『ウルトラマンオメガ』を「友情の物語」であると考察します。

「ソラトは出会う人すべてと友達のような関係になります。そしてみんなからいろんなことを学び、最初は何もわからない宇宙人から徐々に人間のようになっていきます。“人の成長には誰かが必要である”“無駄な出会いなんてない”そんなことが表現されていると思います。大人の方も忘れかけていた“なにか”が思い出せるかもしれません。そんなドラマ性にも注目してほしいです」(近藤頌利)

『ウルトラマンオメガ』場面カット
『ウルトラマンオメガ』場面カット

手に汗握る怪獣とのバトルと怪獣の謎。少年心をくすぐる変身ポーズ。メインキャストが繰り広げる友情のドラマ。これらが三位一体となって投げかける"なぜウルトラマンは地球を守るのか"という大命題。武居監督と『ウルトラマンオメガ』が伝えようとするメッセージに耳を傾けながら、新たなウルトラマン伝説の顛末をチェックしてみてはいかがでしょうか。

制作・編集=オタク総研/©円谷プロ/©ウルトラマンオメガ製作委員会・テレビ東京