Appleのベンチマークは「Intel最弱クラスと比較する悪質で無意味」との声相次ぐ

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先日開催されたWWDC2022で発表された「M2チップ」及び「M2搭載MacBook Wir」のベンチマークが話題になっており、本記事では理由とともに解説する。

WWDC2022の「M2」ベンチマーク

今年もAppleの年に一度の開発者イベント「WWDC(World Wide Developer Conference) 2022」が開催。過去2年間とは違い久しぶりのリアル開催で多くの人が興味を持っていた。
WWDCは開発者イベントなので基本的にはMacOSやiOSなどのソフトウェアの発表だが例年1,2はリリースされる。今回は新型CPU「Apple M2」が発表され、同時に「M2 MacBook Air」も発表された。

今回のMacBook Airは昨年発売されたMacBook Proに似せた角張ったデザインで非常にスタイリッシュ。そんな製品について一部のパソコンマニアの間でM2のベンチマークについて話題になった。

Intel 超低電圧版Core-i5と比較されていた

問題となったのは同イベントで提示された以下のベンチマーク画像。

デュアルコアIntel Core i5搭載MacBook Airと比べ、処理速度が15倍
https://www.apple.com/jp/macbook-air-m2/

一般人が見たらこれは凄い!と思われがちなのですが、そこにはとても大きな罠が。
M1に移行する前に出された最後のデュアルコアCore-i5を搭載したMacは2018年モデル。比較対象のMacbook Airに搭載されているCPUを調べると「Intel Core-i5-8210Y」であることが分かった。

パソコンオタクや少し知っている方ならすく、CPU型版の末尾の「Y」を見て見当がつくだろう。

IntelのCPUには末尾に英字がつくモデルがあり、環境や状況に適応させたモデルであることが多い。「K / X」であればオーバークロック対応だったり「U」は電圧制限をかけたノートPC用だったり。

そして、今回問題になっている比較対象の「Y」シリーズは冷却性能が仕様上不十分な超小型PCにも使われる、「U」シリーズよりも更に電圧制限(=性能制限)を付与した超低電圧版である。

消費電力は7W (通常は20程度・M1でも15W)

CPUの性能ベンチマークを行い、数値として算出して比較可能な「Cinebench R20」スコアにおいて、前述のCore-i5 8210Yは10年前のローエンドCPUよりも僅差で劣っている(Intel Core i3-3220)。

参考:https://www.cpu-monkey.com/ja/cpu-intel_core_i5_8210y-954
※シングルコア性能は第6世代のCoire-i5・Uシリーズより僅かに高いが、8210Yとのコア数の差において比較対象にはなり得ない

これまで細かく紹介してきたが、Appleは2022年に発売した最新CPUと10年前のローエンドCPUを比較して15倍高速であると言っているようなものという認識で問題ない。

しかし、注意してほしい点は一つある。コア数やクロック周波数においては比較対象として大間違いだが、ファンレスであるという点において、効率的な冷却性能ノアビールのためとは言えど比較対象にはなり得る。

GPUに於いても不明瞭との声

その他、GPU性能においても全く根拠の示されていないとして話題になっていた。
GPUに関しては基本的にMacでゲームはできないので、Adobe Premiere ProやAfter EffectsなどのGPU処理を必要とするクリエイティブな処理以外には全く使い道のない物と考えてよいだろう。

MacBook Airに関するベンチマークは同モデルというある程度の比較対象の担保はでき、看過できるもののGPUに於いては比較対象が度のモデルなのかすら提示されていない。今回のベンチマークはPCに極めて無知な一般人にインパクトを与える事に全振りした結果ではなかろうか。